アストン マーティン DB12 S(2) 野性味溢れる4.0L V8ツインターボ 乗り手を一層夢中にさせる「S」化

公開 : 2026.09.25 18:10

700psのV8ツインターボに専用サスなど、全方位で進化を果たしたと主張されるアストン マーティン DB12 Sに、UK編集部が試乗します。野性味溢れるパワー感に、サイズを感じさせない身のこなしに注目です。

余裕・安楽な移動を叶えつつ野性味溢れる700ps

700psを獲得した、アストン マーティン DB12 S。電動アシストは備わらず、中域までのレスポンスは、ライバルと比べれば若干穏やかに感じるかもしれない。しかしパワフルなことに間違いはなく、余裕・安楽な移動を叶えつつ、野性味溢れてもいる。

ブーストは昇圧しても、ターボラグの悪化はない。回転上昇とともにエネルギーがほとばしり、サウンドもクレッシェンド。7500rpmのリミットまで、突き抜けるようだ。

アストン マーティン DB12 S(英国仕様)
アストン マーティン DB12 S(英国仕様)

0-100km/h加速は、2000rpmで保持されるローンチコントロールを利用し、実際のテストで3.4秒とカタログ値に並んだ。835psを誇る同社のヴァンキッシュへ、0.3秒遅れるだけの鋭さにある。約70km/hから110km/hへの中間加速も、4.2秒でこなす。

ミシュラン・タイヤが有能で、カーボンセラミック・ブレーキが巨大なこともあり、制動力も驚くほど。約110km/hから停止するまでに、乾燥路で39.2mしか必要としない。これは、ポルシェ911 ターボSを凌ぐ。ディスクは、日常利用で鳴きがちだとしても。

サイズを感じさせないほど身のこなしは機敏

トランスアクスル配置の8速ATは、デュアルクラッチほどではないが、迅速な変速を披露。左下から聞こえるプロペラシャフトの唸りと相まって、僅かな変速ショックがメカの存在を主張してくる。オールドスクールな味わいが、むしろ好ましい。

フロントノーズは長く、車重も軽くはないが、カーブへ飛び込めばそれを感じさせないほど、身のこなしは機敏。積極的に回頭し、安定性も見事といえる。ワインディングでは、グリップからスリップまで、リアアクスルを積極的に活かせる。

アストン マーティン DB12 S(英国仕様)
アストン マーティン DB12 S(英国仕様)

ステアリングは、標準のDB12より明確に正確性が向上。スポーツ・モード時のアダプティブダンパーと、見事に調和した反応を披露する。

ただし、幅が10mm増したリアタイヤが影響し、軽い操舵と歩調を合わせるような、アクセルやブレーキを活かしたコーナリングは若干ハードルが上がっている。フェラーリ級に、滑沢にボディを振り回せるとしても。

ソリッドなスポーツカーとしての能力は向上

サーキットへ持ち込めば、派手なテールスライドもお手の物。トラクション・コントロールをトラック・モードに切り替え、2速コーナーで負荷をかければ、軽やかにドリフトが始まる。電子制御のリアデフが、魔法をかけるように制御するのを感じ取れる。

他方、路面から伝わる感触は薄れた印象。強化された足回りにより、起伏が目立つ区間では乗員が揺さぶられることも。1番穏やかなGTモードを選んでも、細かな凹凸を拾いがちだった。走行中の車内ノイズも増えており、約80km/h時で65dBAだ。

アストン マーティン DB12 S(英国仕様)
アストン マーティン DB12 S(英国仕様)

「S」化で、ソリッドなスポーツカーとしての能力は向上した。更に優れたDB12へ仕上がっている。運転体験の精緻さでは、ライバルが一枚上手だとしても。反面、路面が荒れた英国で暮らすドライバーにとっては、やや付き合いにくくなったともいえる。

燃費は、高速道路を巡航させて9.8km/L。78Lのガソリンタンクで、750km以上は走れる持久力を持つ。ターボブーストを上げ続ければ、5.0km/Lを割ることも簡単だが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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