グループBを戦うはずだった幻のフェラーリ、288GTO

公開 : 2017.04.23 00:00  更新 : 2017.05.29 18:52

ある意味グループに感謝を

288GTOが参加する筈だったシリーズ・レースは、サーキット・ベースのラリーの中で1番突出したグループBだ。グループBのホモロゲーションを受けるには、200台の量産が必要だった。288GTOは約270台製造されたが、そのすべてが発売前に選ばれた「特別」な顧客向けに販売済みだった。このクルマにはレーシングカーの技術が満載されている。純粋なプロトタイプよりは安価なこのモデルに魅かれて、エンツォは、10年ぶりにラリーに再参戦する気になった。また当時は80年代半ばのスーパーカー・ブームであったため、公道を走れる高性能カーは人気の的であり、その意味でもフェラーリにとって一挙両得だった。しかし、フェラーリがポルシェ959と真正面から勝負する準備ができる前に、ヘンリ・トイヴォネンが事故死し、グループBは速すぎて危険だとして中止されてしまった。

288GTOには圧倒的な存在感がある。またタイヤは現在の基準からすれば幅が狭いが、それでもかなり強いグリップが得られる。


グループBが、短い間ではあったが、これほど光り輝いたことにわれわれは感謝しなければならない。なぜなら、グループBが存在していなかったならば、フェラーリは穏やかな308をベースにモンスターを開発していなかっただろうからだ。とはいっても、308から引き継がれた部分はあまり多くはない。

リッター当り142psを発揮するパワーユニット

エンジン・ブロックは308をベースとしているが、288のV8エンジンは、通常の308よりも、むしろランチアのスポーツレーシング・プログラムに多くを負っている。ストロークが1mm短くなり、排気量が2,967ccから2,855ccに縮小された。これによってFIAのターボ係数1.4をかけても4,000ccのクラス・リミットに収まるようになった。また288ではV8エンジンを横置きではなく、90度縦に回転させて設置されている。また308のトランクに当たる部分に設置された2台のインタークーラー装備のIHIターボチャージャーの横には、トランスアクスル・ギアボックスとインテグラル・ロッキング・ディファレンシャルが装備されている。DOHCdで各気筒4バルブ、ドライサンプ、ウェーバー・マレリの電子フューエル・インジェクションを組み合わせると、卓越したパワートレインができあがる。1ℓ当りのパワーはなんと142psにも及ぶが、さらには、重心を下げ、前後の重量バランスをほぼ50対50にする働きもしている。

グループBの1100kg重量制限(フル装備のロードカーはこれを少しオーバーする)に車重を収めるために、パネルとコンポジット素材のバルクヘッドにケブラーが使用された。それでも、このGTOには、思わず笑みがこぼれるような伝統の香りが色濃く残っている。シャシーは伝統的なチューブラー・スチールだし、ドアは昔ながら手作業によるアルミ製だ。

406psを発揮するオールアロイV8DOHC2855ccユニット。ツインIHIターボチャージャーとインタークーラーを備える。


ホイールベースが308より110mm長くなっているが、エンジン・レイアウトの変更のためにキャビンはより前方に押し出されている。デリケートなドア・ラッチを引き、急傾斜したAピラーに頭をぶつけそうになりながらどうにかこのクルマに実際に乗り込むと、そのことに気づくだろう。

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