AUTOCARロードテスト90周年(2) 初のテスト車/現代ハイパーカー比べてみた

公開 : 2018.12.15 11:40

移動の自由 その共通点とは?

普段から控え目な性能のモデルに乗り慣れているひとびとにとっても、このクルマのスピードは新鮮な驚きだろうが、例え0-32km/h加速がセナの0-193km/hよりも遅かったとしても、そんなことはまったく問題ではない。その性能はこのクルマには十分だと感じさせ、これ以上のスピードが必要だと思うことなど1度もなかった。

さらに、そんなに遠くまで行く必要もなかったのだ。90年前、セブン(当時チャミーとも呼ばれていた)で海まで行こうなどと考える家族は少なく、ラジエータから蒸気を吹き出して路肩に停まるようなトラブルも、想像よりはるかに少なかった。

オースチン・セブンは速くはなかったかも知れないが、優れたモデルだった。素晴らしい移動手段として、他の誰よりも英国人に自動車の便利さを知らしめたのだ。F1とP1に続くマクラーレン第3のモデルとして、ロードカーの可能性をさらに拡げたというのは信じられないが、セナの果たす役割はまったく異なる。

どちらのモデルも運転が楽しかったが、より重要なのは、今日この場所に来たときとはまったく違う感想を持ったということだろう。もちろん、両者を隔てる違いは果てしなく大きい。最初はこの2台の共通点をすべて聞いてみたいと思ったが、コーナーごとに2台を比較してみて考え直したのだ。だからと言って、なにも共通点がないという訳ではない。


実際、オースチンでも濡れることなくどこでも行きたいところへ行くことはでき、どちらのモデルでもその移動距離を決めるのは、機械的な不具合などではなく、集中力や疲労度といったステアリングを握るドライバーに起因するものだ。もし、セブンとセナに何らかの繋がりがあるとすれば、それはわれわれドライバー自身であり、それは90年前から変わらない。

初めて登場した手ごろで丈夫な主要モデルとして、オースチン・セブンは英国が生み出した移動の自由であり、ひとびとはこのクルマに乗って仕事や遊びに出掛けたり、友人や親類、同僚を訪ねたりしたが、それはセブンが登場するまでは思いもしなかったことだった。

だからこそ、90年という年月と技術の進歩がこの2台を隔てているとはいえ、当時といまを比べてみれば、驚くべきことに、この2台には共通するものこそあれ違いなど無いに等しいのだ。

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