優雅に走るスポーツカー シボレー・コルベットC1とメルセデス・ベンツ190SL 前編

公開 : 2019.10.05 07:50  更新 : 2020.12.08 10:56

1950年代半ば、GM(ジェネラルモーターズ)とメルセデス・ベンツはスタイリッシュなスポーツカー、190SLとコルベットC1を生み出しました。スポーティなデザインとは裏腹に、両車ともにエンジンは非力でしたが、改めてそのエレガントさには惹き込まれるものがあります。

飛ばすことを目的としないスポーツカー

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

今回ご紹介するクラシックなスポーツカーは、鋭く走ってラップタイムを削るタイプではない。目的地に急いでいても、むやみに飛ばしてはいけない。クルマが現役だった60年前のように、優雅にスタイリッシュに走りたい。

1950年代に発表された時も、メルセデス・ベンツ190SLとシボレーコルベットC1は、スポーツカーとして表現されていた。1954年のロード&トラック誌には、C1の試乗記事に「スポーツカーと呼んでもいいですか?」という見出しが載っている。

シボレー・コルベットC1/メルセデス・ベンツ190SL
シボレー・コルベットC1/メルセデス・ベンツ190SL

当時、スポーツカーはアメリカ車にとって初めての試みだった。どちらのクルマも「ツアラー」という表現の方がしっくり来るし、クルマとしての評価も損ねないだろう。晴天のカリフォルニアの道をゆったり流していることを想像するなら、コルベットC1や190SLほどぴったりなクルマはないかもしれない。

だが、この2台はスポーツカーとして告知され、発表された。アメリカのレーサー、マーク・ダナヒューにとっては、キャリアを作る重要な役割を果たしたのがコルベットC1で、香港のレーサー、ダグ・ステーンは190SLを運転し、マカオ・グランプリで優勝している。

GM(ジェネラルモーターズ)としては、C1は競技用向けの車両ではないと明言していたし、メルセデス・ベンツ製のスポーツカー・ベースのレースマシンが欲しいなら、300SLが好適だった。一応190SLにはプレキシガラスを付け、バンパーとソフトトップを省いた競技ベースも存在し、17台がレースに参戦してはいる。

ジャガーXK120やMG Tから人気を奪う

190SLとコルベットC1が目指していたところは、アメリカで高い支持を得ていた英国製スポーツカーから、人気を奪うこと。ジャガーXK120やMG Tシリーズなどはその代表だった。

GMから小型軍用艦の呼称を付けたクルマが発表されたのは、1953年。石膏製のモックアップ・モデルが1952年に上層部へ見せられると、量産化が決まり、発表は翌年の1月という速さ。搭載されていたエンジンは当初3.9Lの直列6気筒で、用いられていた部品はシボレー製セダンの在庫品。ホイールベースは短く、オーバーハングも短い。

シボレー・コルベットC1
シボレー・コルベットC1

エンジンの起源は第2次大戦前にまでさかのぼり、1929年型シボレー・シリーズACインターナショナルに搭載されていたユニットから派生した、「ブルーフレイム」と呼ばれるもの。開発から25年後に、シボレーがスポーツカー市場へ参入した初めてのモデルに搭載されたことには驚く。アメリカ的な流れでもある。

マーケティング部門が名付けたブルーフレイムという名前は、青いロッカーカバーに銀色の文字で刻まれていたが、1956年にはシボレー製の新しいV8エンジンへと置き換わる。その結果、最高出力は152psから197psにまで増強。0-96km/h加速も11秒から8.7秒へと縮めている。

パワーグライド・トランスミッションと呼ばれたシボレー製の2速ATが標準装備。直列6気筒エンジンがレブリミットに当たる手前まで回るとシフトアップし、衝撃も小さくなかった。厚い低速トルクが、コーナーを攻め込むスポーツカーではなく、長距離を悠々とこなすグランドツアラーであることを物語る。クルマに乗ってスピードを上げたら、減速するのは給油する時くらいだ。

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