「六本木のカローラ」 BMW 320i(E30) 前編 バブル当時のカローラとの違いは

公開 : 2019.10.05 05:50  更新 : 2021.10.11 14:52

「六本木のカローラ」という言葉を聞いて懐かしく思うのならば、バブル世代でしょうか。前編では、当時の3シリーズを取り巻く環境/モデルについて吉田拓生が振り返ります。

バブル景気の落とし子「六本木のカローラ

photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)

1980年代初頭の日本において、輸入車はまだ特別な存在と言えた。

販売店が少なく、国産車と比べた場合の価格差は現在以上にあり、それでいて信頼性は褒められたものではなかったからである。

「E30」ことBMWの2代目3シリーズ。 出典:BMW
「E30」ことBMWの2代目3シリーズ。 出典:BMW

それでも1980年代の中盤以降、わが国における輸入車の販売台数は急激に増加していくことになる。有名なバブル景気である。

輸入車の中でも特にドイツ車の人気が高かったが、最もポピュラーな1台が、1982年にデビューした「E30」ことBMWの2代目3シリーズだった。

バブル景気の頂へと駆け上がっていた当時の日本において、E30は「六本木のカローラ」と呼ばれていた。

風変わりなニックネームは1980年代終盤、毎晩のように賑わっていた六本木界隈で、E30がまるでトヨタ・カローラのように群れていたことに因んでいる。

と同時にこのニックネームは侮蔑的な意味合いも含んでいたようだ。

5ナンバー枠に余裕で収まってしまうコンパクトなボディが、平凡な国産車のように見られていたからである。

車格はカローラ、ライバルはマークII?

日本中に広く普及したことで親しまれ、時に軽んじられることもあったBMW E30、3シリーズ。その中身はBMWらしさに溢れた充実した内容を誇っていた。

ベーシックな318iは1.8Lの直列4気筒エンジンを搭載していた。しかし上位モデルの320iや325iはコンパクトなエンジンルームにBMWの伝家の宝刀ともいえるストレート6エンジンを詰め込んでいたのである。

E30型3シリーズのサイズはトヨタ・カローラをわずかに大きくした程度だった。 出典:BMW
E30型3シリーズのサイズはトヨタ・カローラをわずかに大きくした程度だった。 出典:BMW

全長4325mm、全幅1645mmというE30のボディサイズを当時の国産車に当てはめれば、トヨタ・カローラを微かに大きくした程度。

だが同年代のE8#型、E9#型といったカローラは1.3Lから1.6Lくらいの4気筒エンジンを横置き搭載した前輪駆動車に過ぎなかった。

対する320iはストレート6、縦置きFRレイアウトだったのである。

国産車でBMW E30、3シリーズに匹敵するスペックを与えられていたモデルの好例はトヨタ・マークII(6代目X80型)である。

同じように直6エンジンとFRレイアウトを与えられていたが、ボディサイズはE30より全長で360mm、全幅で50mmも大きかった。

一方スペック的には似通ったE30とマークIIだが、価格的には大きな開きがあった。

2L直6ツインカム・エンジンを搭載したマークIIグランデの新車価格が205万円だったのに対し、BMW 320iは368万円もしていたのである。

記事に関わった人々

  • 吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。

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