【TVRでグッドウッドに初参戦】アーティストのレースデビュー 前編

公開 : 2020.03.08 07:50  更新 : 2021.02.17 17:44

TVRキミーラに一目惚れ

グラスファイバー製ボディのクルマは、さらにオレンジ色のAC 3000MEへと展開する。「ブロードスピード社のターボを積んだ仕様でしたが、ターボラグが凄く、ヒルクライム競技には向いていませんでしたね」

「しばらくしてエンジンブローし、悪夢のような現実が待っていました」 今につながるTVRへの恋は、彼が12才の時に始まった。父がコンパクトなスポーツカー、TVR 1600Mを手に入れたのだ。記憶は次々によみがえる。

ティム・レイゼルが描いた今回のレースシーン
ティム・レイゼルが描いた今回のレースシーン

「父がTVRビクセンではなく、1600Mを選んだことにがっかりしました。でも、より軽量で速いことは、知っていましたけれどね」 自動車をテーマにしたアーティスト活動が始まった頃、レイゼルはTVRキミーラへ夢中になった。

「ロンドン・モーターショーでひと目見た時から、恋に落ちたことを覚えています。速くて、カッコいい。インテリアは美しく、排気音も驚くほど良いものでした。ACコブラとビッグ・ヒーレーの良い特徴を、一緒に持ち合わせたようなクルマでした」

「当時、そんなスポーツカーは他になかったと思います。これまで4台のTVRキミーラを所有してきました。売る度に後悔して、もう一度買って、を繰り返しています」

レイゼルは1968年のビクセンS2も所有している。ヒルクライムでかつて楽しんでいたクルマだ。ほかにもTVRタスカン V6や、かなり機敏なT350Cもガレージに収めている。「わたしの家族は、TVRにすっかりハマっているんです」

アーティストになった彼は、レースイベントに何度も参加してきたが、作品の販売やプロモーションで大半の時間は過ぎていった。だが、時間を見つけては彼のブースを抜け出して、会場を歩き回った。

長年抱いてきたレースへの憧れ

「自分はチャンスを逃している気がしました。レースへの憧れをずっと抱いてきたんです。カースル・クームでのオータム・クラシックは地元のイベントです。2017年には兄弟のTVRグリフィスも交えて、息子も連れて訪れていました」

「会場のパドックを、面白そうなクルマがないか探して歩きました。そこで白いTVRグランチュラXPG 1を発見。本心ではヒストリック・レーサーを探していたんですが、そのグランチュラはアメリカ風のスタイルで、凄くカッコよく見えたんですよ」

TVRグランチュラXPG 1
TVRグランチュラXPG 1

その夜、レイゼルはグランチュラの歴史について調べたという。「グランチュラのストーリーに魅了されました。オーナーのフィル・クーパーは、南フランスの納屋でグランチュラを見つけたそうです」

「TVRカークラブへ電話し、シャシーナンバーを確認しました。すると驚くような歴史がわかったんです。その時にノートに記したメモは、今も取ってあります」

TVRグランチュラXPG 1は、英国空軍のパイロットだった、ジョン・パディ・ガストンがオーダーしたクルマだった。軽量なシャシーとボディの組み合わせで、レース出場前提の仕様で作られた。

1964年のシーズンでは、グランチュラXPG 1は主要な国際レースのほとんどに参戦している。スパ500kmにニュルブルクリンク1000km、ブランズハッチ・ガーズ・トロフィーなど。

「当時のグッドウッド・ツーリスト・トロフィーでは、2.0L GTのサポートレースにも出場しています。そのレースで優勝したのはロータスエランをドライブしたマイク・スペンス。ガストンは5位でゴールしています」 と説明するレイゼル。

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