【アルピナと25年ぶりの再会】BMW E30 M3と別れて手に入れたC2 2.7 後編

公開 : 2020.04.11 16:50  更新 : 2020.12.08 10:55

M3を手放した資金でC2 2.7を購入

「不当な値段でなければ、買おうと思いました。価格は決まっていませんでしたが、商談はまとまったようなものです」 アルピナC2は、ブーフローが組んだE28などを含む、デビッドのクラシック・コレクションに加わった。

デビッドは、初めて戦ったE30レーサーや、クラシック・ツーリングカー・レーシングクラブに参戦しているE36なども所有している。「今シーズンの結果は聞かないでください」 と苦笑いする。

BMWアルピナC2 2.7(E30 1989年)
BMWアルピナC2 2.7(E30 1989年)

入手後、デビッドのコレクションの台数は増え、C2 2.7のポジションは徐々に低下。幸運にも、売りに出される前に買い手が見つかった。買い主は兄弟のアレックス。「デビッドが売る気だとは知りませんでした。同じ日の午後にM3を売って、C2がわたしのものになりました」

アレックスは、C2の購入資金を得るために、状態の良いE30 M3を売りに出した。「M3は素晴らしいクルマでしたが、それ以上の経歴を持つアルピナC2 2.7を家族から手放すなんて、考えられませんでした」

「アドキンがすべての作業を担当したことを考えると、信じられないですよね。C2はとてもゴージャスなクルマです。たとえ運転しなくても、楽しむことができますよ」 意味ありげに話しながら、彼はわたしの手にC2のキーを渡してくれた。

キーをひねると、シルキーな直列6気筒が目覚める。英国東部、リンカーンシャー・ウォーズ自然公園の道は、アルピナのためのように空いている。

エンジンの存在感は控えめで、洗練された印象を受ける。アイドリング時のサウンドは325iよりもわずかに豊か。ラグジュアリーな雰囲気をたたえるインテリアは紛れもなくBMW E30だが、アルピナ製のステアリングホイールが付いている。

自分のガレージになくてはならないクルマ

車内は大きく四角いガラスが取り囲み、どの方向にも視界は良好。センターコンソールは、わずかにドライバーの方を向いている。トランスミッションはBMW標準のまま。正確でストロークが長い。

アルピナによるチューニングの成果を実感できるのは、C2 2.7のペースを速めたときだけ。臨戦準備が整っているような太いトルクと、引き出しやすいパワーを楽しめるようになる。

BMWアルピナC2 2.7(E30 1989年)
BMWアルピナC2 2.7(E30 1989年)

M3は、BMWのパフォーマンスのアイコンといえる。右ハンドル化によってブレーキとステアリングは改善していても、しっかりとドライバーが受け止める必要のある、ピーキーなクルマだ。

対象的にC2は全体的に温和で速い。パワーアップした2.7L直6エンジンのパワーが有効な、低速コーナーの脱出時では特にそう感じる。

スペックシート上は最速でもないし、見た目もさほど派手ではない。C2の素晴らしさを最大限に享受できるのは、紛れもなく思いのままに走らせている時だろう。

組み合わされた部品以上の、秀逸な体験をさせてくれる数少ない1台。アレックス・ハントが残しておきたいと考えても当然だ。今後、彼が手放すことはあるのだろうか。

「もしアルピナを売ったら、永遠に後悔するでしょうね。デビッドは間違いなく、わたしに売ったことを後悔しているはずです」 と、ためらわずに答えるアレックス。

「きっと彼も、可能なら残したいと考えていたと思います。C2 2.7は、自分のガレージになくてはならないクルマです。ガレージのドアを開ける度に、満面の笑顔にしてくれますからね」

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