BMW i3

公開 : 2013.10.10 19:05  更新 : 2017.05.29 18:00

■どんなクルマ?

近年に登場したモデルで、このi3ほど関心が高く、そして物議をかもしだしたクルマはないだろう。

ドイツのメーカーがその新しいiブランドのオープニング・モデルとして用意したi3は、軽量な5ドア・ハッチバック・ボディに、3時間の充電で160km前後の走行が可能なモーター・ドライブ・システムを搭載したモデルだ。また、その開発費に3000億円近いコストが掛けられたモデルでもある。

メガ・シティ・ビークルのコードネームで開発の進められた最初のiブランド・モデルは、ただ単にその機能性をアピールするだけでなく、老若男女、シングルからファミリー層、そして環境に煩い人間からマニアックなドライバーまで、ハートに響くようなクルマ造りがされているのも特徴だ。BMWは、すべてのテイストと要求に応えたとコメントしているのだ。

確かに今までのどのBMWともデザインは異なり、コンセプトカーがそのまま現れたような未来のカタチを連想させるスタイルである。BMWであることを明確にするのは、そのキドニー・グリルだけだが、そのグリルもブルーとホワイトの囲みがiモデルの特徴として入れられる。

サイズは比較的コンパクトで、全長3999mm、全幅1775mm、全高1578mmというもの。タイヤは19インチではあるが、155/40というロー・プロファイルのものが履かされている。

■どんな感じ?

5ドアのミニMPVのスタイルは、いざという時には5人の乗車が可能なスペースを生み出している。その室内はコンテンポラリーなステアリング・ホイール、ダッシュボードと高解像度のディスプレイが迎え入れてくれる。フロアに敷き詰められた230kgのリチウム・イオン・バッテリーは、96個のセルによって構成され、最高6年または100,000マイルの保証が付いている。

ドライビング・ポジションは良好で、短く太いボンネットの先の視界は非常に良い。一方、リアは太いリア・ピラーによって視界は妨げられてしまう。

従来のスティール・モノコックに代わってアルミニウムとカーボンファイバーが使われているため、そのボディは軽量だ。重量は僅かに1195kg。これはルノー・ゾーイの1390kgや、日産リーフの1525kgよりも遥かに軽い。重量の軽減は徹底して行われており、アウターボディはサーモプラスチックのパネルが使用されているし、そのガラスも今までのどのBMWよりも薄いものが使われている。また、ダッシュボードのトップは、あえて装飾が行われていない。

また、このモノコックは軽量化だけでなく、剛性の向上にも寄与している。その固いモノコックのおかげで、デザイナーはこのi3にコーチスタイルのリア・ドアを与えることができたのである。確かにリア・シートへのアクセスは良くなって入るのだろうが、実際には高いフロアとカーブしたルーフによって、言うほどイージー・アクセスというものではないが。また、リアのウインドーは固定式となっている。

i3の電気モーターはサブフレームに抱かれ、リア・アクスル・アッセンブリーの一部を構成する。また、そのモーターは、シングル・レシオのギアボックスと組み合わされている。

ドライビング・モードは3つ用意されている。コンフォート、エコプロ、エコプロ・プラスの3つで、後者はトップスピードを80km/hに制限し、エアコンのパフォーマンスを抑え、最新のナビゲーション・システムは目的地まで最もフラットなルートを選択するようになる。

また、伝統的な安全装置として、ダイナミック・スタビリティ・システムとコーナリング・ブレーキ・コントロールが装備されている。

スロットル・ペダルを踏むと、即座に168bhpのパワーと25.4kg-mのトルクが発揮される。そのパフォーマンスは0-60km/hが3.7秒、0-100km/hが7.2秒、80-120km/hの追い越し加速が4.9秒と、有名なホット・ハッチと同等のタイムを持つ。

電子制御のお陰でホイールスピンもなく、素晴らしいトラクションを示してくれるのである。

最高速度は150km/hに制限されているが、これはバッテリーの寿命を伸ばすためのものだ。

スポーティなドライブも、軽くダイレクトなステアリングによって充分に楽しめるもの。低い重心も優れた操縦性を高めるのにプラスとなっている。次世代ミニ・ハッチバックと共用される電子機械式のステアリングは、センター・ポジションからのレスポンスもよく、ダイレクトで、低速での機敏さも良い印象だ。本当にすべてがキビキビしているさまは、都市部のコミューターとしては本当に愉しい。

また、ブロントがマクファーソン・ストラット、リアがマルチリンクというサスペンションもスポーティさを醸し出している。スプリングが固いため、乗り心地は固めである。しかし、フラットな路面では何の問題もない。また、ダンピングは比較的柔らか目だ。コーナリングでは、そのステアリングの切れ込みがやや誇張される傾向にはあった。

大きいが細いタイヤは比較的強い粘着力を提供してくれる。ミッド・コーナーではトラクションとスタビリティ・コントロールが上手く動作してくれる。

特徴的なのは、スロットル・ペダルを緩めると、すぐにブレーキを掛けているようなセッティングがされていることだ。これは、回生ブレーキのエネルギーを最大限に発揮するためのもの。従って、停止時以外はほとんどブレーキ・ペダルを踏む必要がなかった。

■「買い」か?

BMWの調査では通勤の1日平均は英国では48kmということだ。これは、航続距離160kmのi3にとっては問題なく走れる距離である。

むしろ、問題となるのはその価格だろう。政府の補助金を差し引いても£25,680(400万円)というプライスなのだ。これは日産リーフよりも£5,000(77万円)高く、ルノー・ゾーイよりも£10,000(154万円)も高いのだ。また、経済性に優れたBMW 116d エフィシエント・ダイナミクスよりも£5,000(77万円)高い。そのため、BMWは£2,995(46万円)のデポジットを詰めば、毎月£369(5.7万円)で3年リースというプランを用意している。

とにかく、その支払いに納得できるのであれば、i3は一見の価値のあるモデルには違いない。たとえ、フル充電に8時間の時間が必要となろうとも、そのモダンなフィーリング、優れたパフォーマンス、魅力的な機敏さ、そして何よりも未来を見据えたテクノロジーは大きな魅力であることに間違いはない。

(グレッグ・ケーブル)

BMW i3

価格 £25,680(400万円):政府補助金込
最高速度 150km/h
0-96km/h加速 7.2秒
燃費 12.9kWh/100km
CO2排出量 0g/km
乾燥重量 1195kg
エンジン モーター
最高出力 168bhp
最大トルク 25.4kg-m
ギアボックス オートマティック

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