【14ブランドの玉手箱】PSA/FCA合併 ステランティスに秘めた可能性とは?

公開 : 2021.01.20 06:45  更新 : 2021.03.05 21:42

PSAとFCAの合併で発足したステランティスは、ほかの大手メーカーにはない可能性を秘めています。

「ステランティス」新名称に驚き

text:Kenji Momota(桃田健史)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

プジョーシトロエン(PSA)とフィアットクライスラー・オートモービルズ(FCA)は2021年1月16日付で統合した。新会社の名称は、ステランティスである。

ラテン語「Stello」をベースとした、星が輝くイメージを造語化したものだという。

ステランティスの企業ロゴ
ステランティスの企業ロゴ

さすがに、2つを単純につなげて、PSAFCAと名乗るのは、投資家、社員、ユーザー、メディアなどに対してわかりづらい、と思うのが一般常識だろう。

ステランティスという名称とロゴは、正式合併に先立ち、2020年11月に公開されていた。

その時点で世界中の多くの人が、ステランティスというまったく新しい名前が登場したことに、かなりの驚きを持ったのではないか、と筆者は思う。

なぜならば、自動車産業界において近年、部品メーカーを除いて自動車メーカー名が完全に変わる事例がほとんどないからだ。新鮮という感覚をこえた大きな驚きである。

しかも、ステランティス傘下には合計14ものブランドがあり、それらはフランス、イタリア、アメリカが起源という極めて稀な状況である。

時代を振り返ってみると、こうした多国ブランドを抱えた企業としては、米フォードが90年代に設立した、プレミアム・オートモーティブ・グループ(PAG)があった……。

ステランティスとPAG何が違う?

スウェーデンのボルボ、英国のアストン マーティンベントレーランドローバージャガーで構成されたPAGの本部は、米カリフォルニア州南部のオレンジカウンティにあった。

筆者はテキサス州内の自宅からPAG本部へ取材に出かけることが何度かあったが、当時の印象としては、フォードの経営思想やモノづくり精神、さらにフォード主導による部品共通性の強い推進力を感じた。

フィアット・ブランドの代表車種 フィアット500
フィアット・ブランドの代表車種 フィアット500    フィアット

その中で、人員の最適化も進み、例えばランドローバーの車体やサスペンション開発者の多くが、モデルSの開発を控えていたテスラに転じた。結果的に、フォードはPAGの各ブランドの良さを生かしきれず、各ブランドは中国企業、インド企業、さらに投資会社へとバラ売りされた後、PAGは消滅した。

こうした経緯を見てきた筆者としては、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)の誕生当初から、同社がどのような事業戦略を進めるのか、とても興味があった。

蓋を開けてみると、フィアットらしさ、ジープらしさなど、各ブランドの個性を維持しながらFCAが中央コントロールセンターの役割を果たしたことが、日本での成功にみられるような高い実績を生んだ。

他方、PSA(プジョー・シトロエン)について、とくにシトロエンのブランド戦略の成功を、筆者は十分に予測できなかった。

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