【EVへコンバージョン】フォルクスワーゲン・タイプ2 リーフ用ユニット搭載 後編

公開 : 2021.02.23 20:25  更新 : 2021.05.18 16:19

VWのクラシックを純EVへコンバージョンするレイシー。作業には賛否両論あるものの、確かな需要はある様子。英国編集部がeダブ社を訪問しました。

一見すると電気自動車と気づきにくい

text:James Ruppert(ジェームズ・ルパート)
photo: Max Edleston(マックス・エドレストン)
translation:KENJI Nakajima(中嶋健治)

 
純EVへコンバージョンされたフォルクスワーゲン・タイプ2。日産リーフ用の電気モーターは89psの最高出力が与えられ、力強くタイプ2を押し進める。48歳の車齢を示すように、各部からガタガタと振動音が聞こえてくる。

停まっている状態では、ブレーキサーボがブーンとノイズを出す。もうじき改良を加える予定だという。

純EVへコンバージョンされたフォルクスワーゲン・タイプ2(英国仕様)
純EVへコンバージョンされたフォルクスワーゲン・タイプ2(英国仕様)

知っている人なら、フラット4ガソリンエンジンが放つバラバラという脈動がないことに気づくはず。でも外から見ている限り、電気自動車だと気づく人は少ないだろう。

オリジナルの通り、ペダルは3つある。エンストすることなく、急な丘も登り切る。国立公園の周辺をゆっくり流すのにも丁度いい。

ダッシュボードには、明るく光るターボ・スイッチが付いている。押すと加速が鋭くなる。

ステアリングには、パワーアシストが付いていない。狭い道ではステアリングが重く、切り返しが大変かもしれない。こちらもアップデート作業を進行中だという。

eダブからフォルクスワーゲン・タイプ2のキャンパーを借りるなら、1日80kmくらいの移動に留めておいた方が良い。航続距離30km程度の余力を残し、キャンプサイトでのんびり一晩明かすうちに、バッテリーを満充電にできる。素晴らしい。

純EVが良いのか悪いのか、という基本的な議論はある。レアメタルを掘り出して世界中へ輸送し、バッテリーを製造することが本当に環境へ優しいのかという疑問もある。ライフサイクルでは、どちらのコストが安いのかという比較も今回はしないでおこう。

もとのエンジンで走るクルマに戻せる

フォルクスワーゲン・タイプ2のキャンパーも2代目ゴルフGTIも、空冷のポルシェ911も、クラシックカーと呼ばれる部類だ。電気自動車へコンバージョンするかしないかは、オーナー次第ではある。

少なくともレイシーは、純EVへのコンバージョンに需要があることを証明した。正しく設計し、安全性が保たれる必要があるため、安い作業ではない。ノースヨークシャーにあるeダブ・サービシズ社からの帰り道、いろいろなことを考えさせられた。

純EVへコンバージョンされたフォルクスワーゲン・タイプ2(英国仕様)
純EVへコンバージョンされたフォルクスワーゲン・タイプ2(英国仕様)

彼の進めるコンバージョン方法は、お手本的な内容だと思う。必要なら、もとのエンジンで走るクルマにも戻せる。レイシーの手法は高く評価されるべきだろう。

電気自動車になったフォルクスワーゲン・ゴルフGTIのエンジンも、箱詰めされ保管されているはず。ガソリンを再び燃やすため、生き返る可能性もある。

もしオーナーが望むのなら、クラシックを電気自動車にコンバージョンすればいい。しかし筆者の考えでは、歴史的に重要で珍しいクルマを所有するという意義を失うようにも思える。

クラシックカーを維持し日常的に乗るには、驚くほどのコストが必要になる。淡白な純EVが嫌いでなければ構わない。だが、エコな美徳を得るためのコンバージョンに掛かるコストも、安くはない。

筆者は、化石燃料がエネルギー源だとしても、クラシックカーはそのままでいいと思う。わたしの小さなE21型BMW 3シリーズは、控えめな快適さを保ちながら往復600kmを走りきってくれた。しかも、わずかな給油時間のみで。

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