新型メルセデス・ベンツCLA、まさかの旧式400V DC充電器「使えない」 800Vのみ対応 欧州

公開 : 2025.05.09 18:45

メルセデス・ベンツの新型『CLA』は800VのDC充電または家庭用AC充電にのみ対応し、従来の400V充電器は利用できません。コスト削減のためと見られますが、欧州の一部地域ではブースターが用意されるとのこと。

ブースター非搭載、コスト削減か

メルセデス・ベンツが投入した新型EV『CLA』は、航続距離792kmを実現する革新的なモデルとされているが、欧州で一般的な400VのDC充電器を使用することはできない。

第3世代となるCLAは新開発のMMAプラットフォームを採用しているが、多くの旧式の50kW充電器や、ほとんどのテスラ・スーパーチャージャーと互換性がない。

ノルウェーなど一部地域では電圧ブースターが搭載されるという報道もあるが、詳細は不明だ。
ノルウェーなど一部地域では電圧ブースターが搭載されるという報道もあるが、詳細は不明だ。

これは、DC-DC電圧ブースターを搭載していないためで、800Vに対応した充電ステーションでのみ急速充電が可能だ。800V充電器は通常、400V充電器の約2倍の速度で充電可能なHPC(高出力充電)ネットワークで採用されている。

800Vの充電器は、まだ十分に普及していない。英国での事情を例に挙げると、同国内には現在、50kW以上の充電が可能な公共充電ポイントが1万4448か所存在する。充電インフラ事業者Zap-Mapは、800V充電器(最大350kW)が一部の場所で利用可能であるものの、400V充電器(最大250kW)ほど普及していないことを認めている。

CLAにおける400V DCコンバーターの省略はコスト削減策と推測され、大多数の顧客が主に自宅でAC接続経由で充電するとの想定が背景にあると考えられる。この場合、400V ACが車載充電器に流れ込み、内部で800V DCに変換されてバッテリーに蓄えられる。

メルセデス・ベンツは、ドイツ向けのオンラインコンフィギュレーターで「400V充電ステーションでの充電は不可能」と明記している。

同社の広報担当者はAUTOCARに対し、「充電ネットワーク全体における800V DC急速充電ステーションの割合は着実に増加している」と述べ、走行中はナビゲーションシステムによって「互換性のある充電ステーションに誘導される」と付け加えた。利用可能な充電ステーションの情報は、ほぼリアルタイムで更新されるとのことだ。

DCコンバーターをオプションで設定するかどうかについては、広報担当者は「現時点ではコメントできない」とした。

ライバルの自動車メーカーは異なるアプローチを採用している。ヒョンデキアは、アイオニック5やEV6などのE-GMPプラットフォーム採用車に、400V-800V変換が可能な電圧ブースターを内蔵し、旧式のDC充電ステーションでも充電できるようにしている。

一方、ポルシェアウディは、マカン・エレクトリックやA6 eトロンなどのPPEプラットフォームのEVに、バッテリーを2つの400Vセクションに分割して充電する(ただし、充電速度は低下する)方式を採用している。

メルセデス・ベンツは、欧州の一部市場で販売されているCLA EVにおいて、いずれの方式も採用していない。一応、車内にDC-DCコンバーターは搭載されているが、これはシートヒーターやインフォテインメント・システムなどの補助システムに12V電源を供給するためにのみ使用される。

欧州各地で400V充電器から800V充電器への切り替えが進んでいるが、ノルウェーなど、他の国よりもEV充電インフラが早期に整備された国では、400V充電器が依然として多く残っている。

一部報道によると、ノルウェーで販売されるCLA EVにはDC-DCブースターが搭載されるとのことだが、他の国でも導入されるかどうかは不明だ。

メルセデス・ベンツのベルギーおよびオランダ向けのオンラインコンフィギュレーターには、充電制限についての記載はない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事