オーナーを虜にする個性 フォルクスワーゲン・タイプ2 T2(レイトバス) 英国版中古車ガイド

公開 : 2023.04.26 08:25

遅くてフワフワで、うるさくて、燃費はイマイチ。それでも楽しいカーライフを過ごせるタイプ2の中古車を、英国編集部がご紹介します。

唯一無二の存在として熱烈なファンが多い

フォルクスワーゲン・タイプ2が嫌いだという人は、殆どいないだろう。エンジンは非力で燃費はイマイチ。それでも、爽快な初夏の早朝に浜辺を目指すクルマとして、これほど適したモデルはそう多くないと思う。

カリフォルニアのサーファーにとって、タイプ2は不可欠なアイテムかもしれない。完璧なクルマとはいえなくても、唯一無二の存在として、熱烈なファンが多いことは事実だ。

フォルクスワーゲン・タイプ2 T2(レイトバス/1967〜1979年)
フォルクスワーゲン・タイプ2 T2(レイトバス/1967〜1979年)

1967年にT1からアップデートされたタイプ2のT2、通称レイトバスでも、速さを求めてはいけない。ノーマルの空冷式・水平対向4気筒エンジンは、1.6Lで最高出力が50ps。静止状態から100km/hまでの加速は、風向きが良くても30秒程度かかる。

ブレーキの効きも期待しない方がいい。ペダルの感触はスポンジのようにフワフワで、制動距離はボート並みに長い。市街地でも充分な速度に達するだけで一苦労。赤信号には、予測的に備える必要がある。

背が高く重いワゴンボディだから、コーナリングも得意とはいえない。サスペンションはゼリーのように柔らかく、カーブでは傾くボディへ乗員が耐える必要がある。ステアリングホイールは重く、曲がる度にドライバーは沢山の筋力を使う。

それでも人気は高く、英国で状態の良いT2を探す場合は、2万ポンド(約322万円)以上の予算が必要。しっかりメンテナンスされ、サビの少ないボディがオリジナルへ近いインテリアを包む例を探せる。

オーナーの気持ちを掴んで放さない個性

既に半世紀以上前のクルマだから、経年劣化でエネルギー効率は大幅に落ちていると考えたい。燃費は、7.0km/Lに届いたら褒めてあげてほしい。排気漏れにも注意したい。

安全性も高くはない。運転席はフロントアクスルの真上で、クラッシャブルゾーンは殆どない。ヘッドライトも暗い。ワイパーは充分にフロントガラスを拭き取れず、雨の日は外出を諦めさせるだろう。

フォルクスワーゲン・タイプ2 T2(レイトバス/1967〜1979年)
フォルクスワーゲン・タイプ2 T2(レイトバス/1967〜1979年)

エンジンルームの周辺に、デッドニングを施しているマニアも多い。走行中のエンジン音が大きいためだ。風切り音も盛大だから、ノイズは小さいに越したことはない。

現代的なクルマのように、気を使うことなく毎日乗れるわけではない。日々の整備と調整、忍耐が欠かせない。予定時間通りに目的地まで着きたい場合は、新しいT7 マルチバンなどを選んだ方が賢明だろう。

それでも、好きだという人は多い。T2を運転することは、アクティブな体験だ。常にドライバーは構えている必要があっても、弱点を乗り越えられれば深い恋に落ちてしまう。

扱い方を習得すれば、その魅力が見えてくる。所有すること自体が斬新な体験になる。身近な旅行でも、思い出に残るイベントになる。フワフワの操縦性も、嫌いではなくなる。

フォルクスワーゲンT2は見た目も可愛いし、フラット4のサウンドも特徴的。最大のストロングポイントは、オーナーの気持ちを掴んで放さない個性だといえる。1度虜になれば、弱点も見逃せてしまうものだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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