フィアット500L 1.6マルチジェット 120 ビーツエディション

公開 : 2014.02.21 22:10  更新 : 2017.05.29 18:51

■どんなクルマ?

フィアットのスモールサイズ・ミニバン、500Lに新たなトップ・グレードが設定される。その名はビーツエディション。これは惜しみなく装備が盛り込まれた500L “トレッキング” をベースにした新しいトップ・モデルである。”トレッキング” は、SUVテイストを演出するために標準の500Lの地上高をわずかに高くしたモデルだ。今回テストするビーツエディションは、価格設定がプレミアム性を求められる£1600(約270万円)になっている。このため、スタイリングと装備の両面において、その価格に相応しいアップグレードが数多く施されている。

外観の変更はカラーリングに重点が置かれている。ビーツエディションのカラーリングはブラックとグレーのツートン・カラーで、マット仕上げとグロス仕上げの異なるフィニッシュから選択できる。また、ダークカラーの17インチ・アロイホイールの中に収まるブレーキ・キャリパーなど、ところどころにレッドのカラーリングを配している。

この配色はインテリアにまで及び、ダッシュボード・パネルがマットグレー、ファブリック・シートがブラックとなり、バックレストの人工皮革部に赤い “500” のロゴがあしらわれている。デュアルゾーン式オートエアコンが”トレッキング”以上のグレードに与えられ、同様に7スピーカーと、モデル名にもなっている520ワット”ビーツオーディオ”サウンドシステムが奢られる。

ビーツエディションの導入と同時に2つの新型エンジンが500Lシリーズに採用されている。いずれも最高出力120psを発生する4気筒ユニットで、1.4ℓT-ジェット・ターボ・ガソリンエンジンは最大トルク22.0kg-mを2500rpmで、1.6ℓマルチジェット・ディーゼルエンジンは32.6kg-mものトルクを1750rpmで生み出す。

他にもビーツエディションで選択可能なエンジンとして、0.9ℓツインエアー・ガソリンエンジンという106psを発生するモデルと、上述の1.6ℓマルチジェット・ディーゼルをトルクは変更せず出力だけ抑えた仕様が用意されている。

■どんな感じ?

スタイリングの変更によりビーツエディションはぐっと都会的な印象になった。とくにインパクトのあるマットグレー仕上げにその傾向が感じられる。それにサウンドシステムの出来はオーナーを満足させるものになっている。

目を凝らせば車内にはエッジの処理が甘いプラスチックパーツが少しばかり存在する。また500Lのスタイリングは少々個性に欠ける印象がある。それにもかかわらず、キャビンの質感は全体的には素晴らしく、3ドア・モデルの500と比べても勝っていると言える。特製のシートは固い座り心地で両サイドのサポート性に優れたものだ。一方でドライビング・ポジションは高めになっていて、500に座っている時とは違う感覚が味わえる。

120psのマルチジェット・ディーゼルは、同じエンジンを106psに抑えた仕様に比べて£500(約8万円)ほど高くなるが、可変ジオメトリー・ターボチャージャーを介して追加の14psを生み出している。燃費や環境性能に生じる差はわずかで、燃料消費率が0.5km/ℓ下回り、CO2排出量が3g/km増加するだけである。この120psユニットは動力性能が向上しており、0-100km/h加速タイムを11.3秒から10.7秒へと短縮している。また、一瞬のターボラグを挟んで2000rpmから力強い加速が味わえる。それにもかかわらず106ps仕様と同様に洗練度が不足しているのを感じる。

アイドリングの音はにぎやかで、フルスロットル時には騒がしい低音を発する。またわれわれのテストカーでは4000rpmで共鳴が発生していた。これはクルージング・スピードに達すると収まるが、静粛性というものとは無縁のクルマである。6段マニュアル・ギアボックスは、切れがあり正確な操作感のものだ。

車高が標準の500Lよりも10%高くなったこのクルマは、乗り味は快適性重視の落ち着いた走りを見せる。コーナーを果敢に攻めると非常に大きなボディ・ロールを発生するが、フラフラするということは決してない。ステアリングは操舵感にゆとりがあるもので、切り替えし時に役立つシティモードが備わっている。これはパワーステアリングのアシスト量を増やし、空気に触れる程度の力で操舵できるというものだ。その場合でもステアリングの正確さは失われずに残っている。

あまり距離を走らないドライバーなら1.4ℓ T-ジェットの方が気に入るかもしれない。110kgも軽くなるので結果として敏しょう性が勝るのだ。力強いレスポンスを味わいたいなら、4000rpm以上まで回す必要がある。その場合でもディーゼルに比べればターボ・ラグは少なくて済む。T-ジェットならアイドリングはほとんど音がせず、クルージング・スピードでもずっと静粛性が勝っている。同じ最高出力のディーゼルモデルよりも£1000(約17万円)安く手に入るが、燃料消費率は良くも悪くもない14.5km/ℓで、CO2排出量は159g/kmにとどまる。

■「買い」か?

120psを発するこのクルマ、フィアット500Lマルチジェット120 ビーツエディションは、フロント・ドライブで£22240(約370万円)という価格設定のミニ・カントリーマン・クーパーSDと非常に近いライバル関係にある。

スタイリッシュな2台のスモールサイズ・ミニバンのうちどちらかを選ぶつもりなら、それはその人の考え方次第で決まってくる。走りの性能にこだわるとう人ならミニに満足するだろうし、快適性も重要という人ならフィアットを考えるのが賢明であろう。

(リチャード・ウェーバー)

フィアット500L 1.6マルチジェット 120 ビーツエディション

価格 £21,690(約370万円)
最高速度 188km/h
0-100km/h加速 10.7秒
燃費 21.7km/ℓ
CO2排出量 120g/km
乾燥重量 1445kg
エンジン 直列4気筒1598ccターボ・ディーゼル
最高出力 120ps/3750rpm
最大トルク 32.6kg-m/1750rpm
ギアボックス 6速マニュアル

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