【4心臓の見事な調律】フェラーリSF90 ストラダーレへ試乗 1000psのPHEV 後編

公開 : 2021.10.25 19:05  更新 : 2021.10.26 15:15

過去最もエクストリームな公道用フェラーリが、英国へ上陸。英国編集部が1000psのトリプルモーターPHEVを一般道で解き放った印象とは。

世界最速のストラダーレ・マシン

執筆:AUTOCAR(オートカー)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
フェラーリSF90 ストラダーレの乗り心地は、驚くほど優れている。これに対抗できるライバルは、極めて限られるだろう。バランスの良いシャシーを備えていることの、証ともいえる。ドライビング体験の素地になる。

ステアリングの反応は、現代のフェラーリらしくクイック。一部のモデルのように、過敏というわけでもない。息を呑むほどの精度で、コーナーのラインを狙える。そのフロントタイヤを追うように、リアタイヤが意欲的に追従していく。

フェラーリSF90 ストラダーレ・アセット・フィオラーノ(英国仕様)
フェラーリSF90 ストラダーレ・アセット・フィオラーノ(英国仕様)

ステアリングホイールを切り込んでいくと、フロントの駆動用モーターが穏やかに回頭をアシスト。完璧な重量配分にあることが、動きから感取できる。同時に、安定性とグリップ力も絶大なほどに高い。

公道でミシュラン・タイヤの温度を上げることは難しいかもしれない。しかし一度温まれば、SF90は世界最速のストラダーレ・マシンへと、さらに一皮むける。直感的にパワーを引き出し、路面へと展開できる。

コーナーを鋭く切れ込んでいくさまは、まさに外科用メスで辿っているかのよう。しかも軽くないPHEVでありながら、ある一定領域までは高負荷時でも落ち着きを失わない。フェラーリF8 トリブートのように。

SF90の能力は深遠なほど優れ、平静を保ち続ける。ドライバーが、その手のひらで転がされている感じでもある。

この印象を生んでいる理由の1つが、3基の駆動用モーターとV8ツインターボ・エンジンの見事なまとまり。まるで1つのユニットのように調律されている。

フェラーリとして煮えきらないことも確か

様々な状況に応じて、モーターとエンジンが協力しながらボディを進めている事実に気付くことはできる。だがエンジンが目覚める瞬間を除いて、展開されるパワーやトルクに一切の乱れはない。

常に小気味よく、レスポンシブな加速力を引き出せる。さらに改良が加えられた8速デュアルクラッチATも出色の仕上がり。変速自体にイベント性を持たせるほどの精度と素早さで、次々に最適なギアへつないでくれる。

フェラーリSF90 ストラダーレ・アセット・フィオラーノ(英国仕様)
フェラーリSF90 ストラダーレ・アセット・フィオラーノ(英国仕様)

これに、バランスに優れたシャシーと質感の良い乗り心地が組み合わさる。秘めた能力の半分以下しか発揮させなくても、3分の1程度でも、ワインディングを痛快に楽しめる。

PHEVとして、多少のマイナス点もある。フロントに駆動用モーターが載ることで、ボンネット内の荷室空間は限定的。夫婦なら、1泊2日の旅行でも使いにくいかもしれない。

高速道路でのロードノイズは、長距離ドライブをしたい気持ちを後押ししてくれない。アセット・フィオラーノ・パッケージを選ばなければ改善されるかもしれないが、F8 トリブートを所有しているなら、そちらを頻繁に選ぶだろう。

サーキットを積極的に走らせるような場面でも、フェラーリとして煮えきらないことは確か。軽量な488 ピスタには、よりドライバーの遊び心を引き出してくれる個性があった。ステアリング・フィールも、一層輝いていた。

今ならまだ、ランボルギーニウラカンSTOという存在も浮上してくる。フェラーリのフラットプレーンV8エンジンに対し、自然吸気V10エンジンには更なる魂が宿っている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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