ポルシェ・ミッションRコンセプトへ試乗 1100ps 純EVのケイマンが透ける 後編

公開 : 2021.11.29 08:26

純EV版のケイマンとも遠くないはず

ポルシェは、完全な空想でコンセプトカーを作ることはない。このミッションRも同じなはず。

2015年に発表されたミッションEは、2019年に発表されたタイカンとどれだけ似ていたか、思い出していただきたい。恐らくこのクルマは、ポルシェが将来的に作るであろう、レーシングカーの姿をある程度は予見していると考えていい。

ポルシェ・ミッションRコンセプト・プロトタイプ
ポルシェ・ミッションRコンセプト・プロトタイプ

さらに、ポルシェがケイマンを純EVで作ると決断したのなら、恐らくミッションRとは大きく違わない姿になるだろう。走りも、かけ離れることはないと思う。その決断が下される日は、それほど遠くないのかもしれない。

筆者は、内燃エンジンを載せたクルマを楽しめる現在から離れたくない。でも、もはや選択肢としては選べなさそうだ。

完全に純EV化した未来は、現在と同じくらい楽しいものになるだろうか。それが叶う可能性は高いと、ポルシェがカタチにした純EVスポーツカーの未来像、ミッションRコンセプトを体験して思った。

番外編:ミッションRが四輪駆動のワケ

ミッションRコンセプトのプロジェクト・マネージャーを務めたミヒャエル・ベーア氏へ、後輪駆動ではない理由を訪ねた。車重は1500kgと重くはないが、フロント・モーターを削れば、より軽くなるのではないかと考えたからだ。

その理由は2つあるという。クオリファイ・モードで1100psを解き放つには、トラクションが極めて重要になるということが1つ目。

ポルシェ・ミッションRコンセプト・プロトタイプ
ポルシェ・ミッションRコンセプト・プロトタイプ

そしてベーアが続ける。「さらに、後輪駆動ではクルマが重くなります」。思わず聞き直してしまったが、事実だ。

フロント・モーターが減速時に回収する運動エネルギー量は、かなり大きい。全体の40%以上を賄っているという。回生ブレーキで得られる電気が減れば、同じ距離を走るために、バッテリーをそのぶん大きくする必要がある。

駆動用モーターよりバッテリーが重たいことは、ご存知のとおり。結果として後輪駆動のミッションRは、四輪駆動より重くなってしまうのだ。

ちなみに、回生ブレーキと、従来のパッドとディスクで制動する摩擦ブレーキとの制御は見事だった。思い切りブレーキペダルを踏んでも、どこまでが回生ブレーキで、どこから摩擦ブレーキが働いているのか、知覚できないほどだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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