30歳以下のコンクール・デレガンス 前編 スピットファイアMkIII/BMW Z1 ほか

公開 : 2021.12.19 07:05

クルマ好きの若返りを目指すべく、英国で開催されたコンクール・デレガンス。英国編集部が参加者へ話を伺いました。

若返りを目指すクラシックカーの世界

クラシックカーという趣味は、世界中で楽しまれている奥深い世界だ。しかし若い世代にとっては、情熱を持っていたとしても、少々門戸を叩きにくい世界でもある。

その傾向は、クルマのコンディションや経歴が重視される、コンクール・デレガンスで特に当てはまるといえる。運転免許を取って日の浅い人からすれば、老人クラブの1ジャンルに見えているかもしれない。

ハンプトンコート・パレスで開かれた、アンダー30クラスのコンクール・デレガンスの様子
ハンプトンコート・パレスで開かれた、アンダー30クラスのコンクール・デレガンスの様子

保守的な見られ方を変えようとする動きも、なくはない。だが、期待通りの成果が得られていないことは事実だ。

そんななかで英国では、2021年にアンダー30クラス(30歳以下限定)という枠で、コンクール・デレガンスが開催された。次世代の自動車エンスージァストのために創設したと、主催者も認めている。

これはロンドン南部、テムズ川沿いのハンプトンコート・パレスで毎年開かれる、コンクール・デレガンス・イベントの1つとして設けられたもの。様々なクルマがエントリーし、若いクラシックカー・ファンの発掘につながったようだ。

アンダー30クラスで総合優勝を掴んだのは、ピアーズ・トリベルヤン氏が大切にする1921年式ヴォグゾール30-90 Eタイプ・ツアラーというビンテージモデル。しかし、1995年のメルセデス・ベンツSL320など、モダンクラシックも数多く出展された。

クラシックカーとなると、ご高齢の方へ話を伺うことが多い。今回は、将来有望な参加者へのインタビューをご紹介させていただきたい。

シュタイアー・プフ500(1962年)

オーナー:ヘンリー・リスニー氏

来場者の多くがフィアット500と勘違いしていた、真っ赤な1台があった。「これは1962年式のシュタイアー・プフ500。フィアットではありません」。と、笑顔で説明してくれたのは、オーナーのヘンリー・リスニー氏。

シュタイアー・プフ500(1962年)とヘンリー・リスニー氏(左)
シュタイアー・プフ500(1962年)とヘンリー・リスニー氏(左)

「シュタイアー・プフ社は、フィアットから500の生産権を買取ったダイムラー社がオーナーでした。駆動系はオリジナルのフィアット500とは、まったく異なるんです」

「エンジンは直列2気筒ではなく、水平対向2気筒ユニットで、排気量は後期型で650ccあります。最高出力は30psほど。変速しやすくするシンクロメッシュ付きのZF社製4速MTが組まれていて、タッチも別物です」

ここまで状態の良いシュタイアー・プフ500も珍しいが、オーナーが30歳以下ということも珍しい。29歳のヘンリーは人生での優先事項として、このクルマを掲げている。

「自分が8歳の頃からシュタイアー・プフ・クラブのメンバーでした。ずっと欲しかったクルマなんです。非常にレアで、売りに出ることは殆どありません」

「数ヶ月前に開かれたロンドン・クラシックカー・ショーで、偶然これを発見。なんとかお金を工面して、手に入れたんですよ」

記事に関わった人々

  • ジェームス・バニスター

    James Bannister

    英国編集部ライター
  • ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

30歳以下のコンクール・デレガンスの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

BMWの人気画像