自動車専門誌が選ぶ、21世紀を代表するクルマ 25選(後編) 2011~2025年

公開 : 2025.10.26 11:45

激動の2000年代。自動車業界にはさまざまな出来事がありましたが、多大な影響力を持つクルマも数多く登場しました。今回は過去25年間を振り返り、各年を象徴するメモリアルなモデルを1台ずつ紹介します。

2011年:レンジローバー・イヴォーク

レンジローバー・イヴォークの登場は、ジャガーランドローバーにとって大きな転換点となった。初期のプレミアムコンパクトSUVの1つとして、まったく新しい顧客層にリーチし、驚異的な成功を収めることができた。

イヴォークはまもなく、ランドローバー全体の販売の3分の1を占めるまでに成長。高級車であることに変わりはないが、市場に広く浸透し、街中でも数多く見かける。

2011年:レンジローバー・イヴォーク
2011年:レンジローバー・イヴォーク

単価ベースの収益性で見れば、フラッグシップのレンジローバーの方がはるかに高いが、イヴォークはジャガー・ランドローバーの地位を一段高めることに成功した。後に新型ディフェンダーが登場するまで、どのモデルも成し得なかったことだ。

イヴォークの影響力の大きさを示す証拠として、コンバーチブル仕様を追加したことが挙げられる。結局は短命に終わったが、コンバーチブルが導入に値すると判断されたこと自体が、当時のイヴォークの重要性を物語っている。

2012年:マクラーレンP1

ロン・デニス氏が2012年のパリ・モーターショーでP1を発表した時、わたし達は未来の一端を目の当たりにすることになった。しかし、このフラッグシップスーパーカー(マクラーレンにとってF1以来)が将来のスーパーカーの在り方をどれほど書き換えることになるか、想像できた人はどれだけいただろうか。

ターボチャージャー、カーボンファイバー製モノコック、ハイブリッド化、アクティブエアロダイナミクス――P1はこれらすべてを備え、サメやマンタといった海洋生物から着想を得た「バイオミミクリー」なボディを纏っている。先見の明に満ちた製品であり、今日でもなお新鮮に感じられる。

2012年:マクラーレンP1
2012年:マクラーレンP1

P1が卓越している点は、驚異的なハードウェアや息をのむようなスピードではなく、主観的なものだ。マクラーレンは持てる限りの技術を投じ、複雑化したにもかかわらず、運転する喜びは失われていない。活気と遊び心にあふれ、マクラーレンは高性能だが退屈だという当時の評判を打ち破った。

もちろん、新鋭マクラーレン・オートモーティブの真の力を示したという点も忘れてはいけない。フェラーリにはラ フェラーリが、ポルシェには918スパイダーがあったが、マクラーレンも対抗馬を用意していた。P1こそがマクラーレンを飛躍させたクルマだ。

2013年:フォルクスワーゲン・ゴルフ

セカンドアルバムを成功させるのも大変だが、サードアルバムを完璧に仕上げるのはさらに難しい。そして4作目、5作目も頭を悩ませる。だが7作目となると? 大ヒットしたファーストアルバムのように、ジャンルを形作るような画期的な作品になるとは到底思えない。

だからこそ、7代目フォルクスワーゲン・ゴルフが、半世紀以上にわたる系譜の頂点として誇り高く君臨しているのは、率直に言って驚くべきことである。

2013年:フォルクスワーゲン・ゴルフ
2013年:フォルクスワーゲン・ゴルフ

素材の質、洗練度、運動性能、燃費において前モデルから飛躍的な進歩を遂げたゴルフ7は、高級感と実用性を兼ね備え、「手頃な価格のファミリーカーには魅力がない」という通念を覆す存在となった。

そしてこの世代のGTI、特にフェイスリフト後のMk7.5バージョンは、おそらくスポーツ性能を追求したフォルクスワーゲンの真骨頂と言えるだろう。価格、手軽に得られる運転の喜び、日常での実用性という、ほぼ不可能とも言えるバランスを巧みに実現し、近年においてホットハッチの理想形に最も近づいたクルマである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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