レーシングチームとのコラボ ロータス・エラン BRM 最高傑作のベスト版 後編

公開 : 2022.04.02 07:06

驚かされるツインカム・エンジン

通常のエランとは違うことは、走り出してすぐに見えてくる。チューニングが施されたツインカムに、何より驚かされる。気難しい部分はなく、純正エンジン以上の動力性能を与えている。

時々サーキット走行を楽しみつつ、日常的に郊外のドライブを楽しみたいドライバーには最適。市街地でも扱いやすいが、その気になれば慌てる子犬のように俊敏に走る。同時に、限界まで攻め込むことで、大きな喜びを味わえる。

ロータス・エラン BRM SE(1967年/英国仕様)
ロータス・エラン BRM SE(1967年/英国仕様)

ステアリングホイールへ小さな入力を加えると、エラン BRMは即座に反応。車重は軽く、早めのアクセルオンにも応えてくれる。不安な部分はまったくない。

ツインカム・エンジンは、7000rpmまで気持ちよく吹け上がる。アクセルペダルを緩めると、マフラーからパンパンッとアフターファイヤーが弾ける。小気味いいエランなら、耳障りということもない。

エラン BRMの中には、超クロスレシオのトランスミッションが組まれた例もあったようだが、純正の4速MTは公道を爽快に走るスタイルへ合っている。シフトレバーを操ることも楽しい。

ダブルクラッチを踏むか、ゆっくりスライドさせるマナーが求められるが、心地よくコクリと決まる。唯一慣れが必要だったのが、サーボアシストのブレーキ。ペダルの踏み加減と立ち上がる制動力とを理解するまで、少しの不安があった。

モータースポーツが最も輝いていた時代

開けた丘陵地帯を、小さく貴重なエラン BRMで駆け回る。こんな素晴らしい体験を、ひと握りのドライバーしか楽しめていないとは。秘密の世界への扉を、思い切り開いたような気分になった。

エラン BRMが驚くほど少ない数しか生産されなかった理由は、1968年のアメリカ・インディ500での悲劇にある。レーシングドライバーとして参加したスペンスの死去を受け、生産は終了してしまった。

ロータス・エラン BRM SE(1967年/英国仕様)
ロータス・エラン BRM SE(1967年/英国仕様)

オイルまみれでも構わないドライバーや、自動車購入に掛かる税金を免れたい英国人ドライバーが、ロータス・エランをキットの状態で購入した。BRMのチューニングは、その特徴を上手に突いた手法といえる。

動力性能が、見違えて向上しているわけではない。それでも、野心的な見た目から自在に振り回せる個性まで、エラン BRMは他にはない魅力で溢れている。モータースポーツが最も輝いていた時代が生んだ、ブリティッシュ・スポーツカーだ。

ステアリングを握れば、往年のレーシングドライバーの姿が浮かんでくる。刺激的で、完璧なロータス・エランのように感じた。

ロータス・エラン BRM(1967〜1968年/英国仕様)のスペック

英国価格:1525ポンド(キット状態)/7万ポンド(約1085万円)以下(現在)
生産台数:10台(推定)
全長:3689mm
全幅:1422mm
全高:1175mm
最高速度:206km/h
0-97km/h加速:6.8秒
燃費:9.9km/L
CO2排出量:−
車両重量:696kg
パワートレイン:直列4気筒1558cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:132ps/6500rpm
最大トルク:−
ギアボックス:4速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・マクレマン

    Greg Macleman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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