思いがけない成功? フォルクスワーゲン・グループ、記録的収益を達成 2021年決算

公開 : 2022.03.30 18:45

根本的な問題は未解決 高収益は一過性のもの?

しかし、良いニュースばかりではなかった。セアトは、高価格帯のクプラ(セアトから独立した高性能車ブランド)が売上を押し上げたにもかかわらず、利益を計上することができなかった。フォルクスワーゲン・グループは、セアトの業績が「商品価格の上昇と半導体の不足によって著しく弱体化した」と述べている。

グループの利益増は、高価格帯モデルの価格上昇(または割引率の低下)だけによるものではない。中古車価格の高騰、特にリース部門であるフォルクスワーゲン・ファイナンシャル・サービス(VWFS)が保有する中古車によって利益を得たのである。

ゴルフなど比較的低価格帯のモデルは減産の影響を受けた。
ゴルフなど比較的低価格帯のモデルは減産の影響を受けた。

新車の不足が中古車の価値を高めたため、リース車が戻ってくるときには1台分の価格となるように予算を組んでいたものが、突然プレミア価格で取引されるようになったのだ。その結果、VWFSの利益は2倍以上の約60億ユーロ(約8130億円)となった。これは、「主に中古車の需要が高く、信用リスクと残存価値リスクに対するリスクコストがかなり低いため」であるという。

しかし、アナリストたちは、グループがこの高い収益性を維持し続けることができるのか、冷ややかな見方をしている。投資銀行ジェフリーズのアナリスト、フィリップ・ユショワは投資家向けメモの中で、自動車販売による90億ユーロ(1兆2000億円)の利益増は、同社のコントロール外の「外部要因によるものがほとんど」であると書いている。

彼は、「固定費と変動費のドリフトが2020年の休止期間を経て再開した」と警告し、同社が長い間、高コストの性質に適切に対処できていないことに注意を促している。特に、原材料と生産コストの上昇による19億ユーロ(約2570億円)の打撃は、生産台数の増加に伴って上昇する可能性が高いため、半導体危機が緩和されれば、この「奇跡の年」は一過性のものに終わるかもしれない。

フォルクスワーゲン・グループは、他の業界と同様に、今年の思いがけない利益を賢く使う必要がありそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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