【詳細データテスト】フォルクスワーゲン・トランスポーター 平凡な走り 盛大なノイズ あくまでバン

公開 : 2022.04.09 20:25  更新 : 2022.04.26 03:09

意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆

すでにトランスポーターのラインナップは、本来の用途における要求をすべて満たしているといっていい。そこに追加されたスポーツラインは、1列シートのパネルバンと、2列シートのクルーバンであるコンビに設定。前席は助手席がベンチシートとなる3座も用意され、コンビの後席シートは取り外しが可能だ。

エンジンは1機種で、204psの2.0L直4ツインターボディーゼル。英国向けトランスポーターの最上位ユニットで、性能面で他グレードとの違いはない。トランスミッションは、2ペダルの7速DCTのみが組み合わせられる。

スポーツラインのエンジンは、204psを発生する2.0L直4ツインターボディーゼル。7速DCTを介して前輪を駆動する。
スポーツラインのエンジンは、204psを発生する2.0L直4ツインターボディーゼル。7速DCTを介して前輪を駆動する。    LUC LACEY

ホイールベースは、3mのショートと3.4mのロングから選べるが、ルーフ高や積載重量はすべて同一。スポーツラインのベースはトランスポーターT32のシャシーで、最大積載量は1tほどとなる。

トランスポーターのラインナップは幅広く、用途に合わせてさまざまな仕様が選べるのが特徴だ。エントリーモデルはショートホイールベースのパネルバンで、3万ポンド(約465万円)以下で買える。エンジンは111psの2.0Lディーゼルで、前輪駆動だ。最大積載量は800kgで、荷室にはユーロ3パレットがふたつ積み込める。

テスト車は、204psの2.0Lディーゼルだが、すべてのユニットはフォルクスワーゲンのEA288型4気筒のバリエーション。このほか、フォルクスワーゲン系のチューナーであるアプト扱いで、EV仕様となるe−トランスポーターが販売されている。エンジンはフロント横置きで、前輪駆動をベースに、ハルデックス式4モーション4WDも設定される。

商用モデルで6座以上が必要なユーザーむけのトランスポーター・シャトル、より上質なピープルムーバーであるカラベル、キャンピングカー仕様のカリフォルニアもラインナップ。大柄なワンボックスに求められるニーズは、すべて揃っているといっていいだろう。

現行モデルで6世代を数えるトランスポーターだが、現代的なモノコックシャシーを採用したのは4代目から。T6と呼ばれる現行世代では、電動パワーステアリングを採用し、最新の運転支援システムを導入。サスペンションは四輪独立式で、前ストラット/後セミトレーリングアームにコイルスプリングを組み合わせる。

そのメカニズムゆえに、このクラスのバンとしてはパフォーマンスモデルのベースとして最有力候補といえる。たとえフォルクスワーゲンの手の入れ方が、きわめてライトなものだったとしてもだ。

スポーツラインのホイールは他グレードよりワイドなリムの18インチで、タイヤも幅が広く低扁平だ。アイバッハ製のスポーツスプリングを装着し、車校は30mmダウンしている。

ブレーキのアップグレードはなく、他グレードにオプション設定されるアダプティブダンパーは用意されない。トランスポーターに標準装備される、荷重感応式のパッシブダンパーがスポーツラインでも使用される。

テスト車は、最上級仕様のブラックエディションで、サイドとリアの着色ガラス、ブラック塗装のホイールとサイドシルバー、専用のデカールが装着されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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