M3用6気筒エンジンの駿馬 BMW Z3 M アナログなFRの魅力 英国版中古車ガイド

公開 : 2022.04.20 08:25

新しい2シリーズ・クーペが登場しましたが、Z3 Mの輝きも衰えません。中古車で楽しむ魅力を英国編集部がご紹介します。

Z3 Mクーペの生産は1112台のみ

極秘プロジェクトと呼ばれるものには、大概特別な何かが潜んでいる。クルマの場合も同様。主力モデルとは異なる、情熱的な技術者の結晶といえる成果が導かれることも少なくない。

今回ご紹介するBMW Z3 Mも、そんな1台に加えられるだろう。一生モノのドライビング体験を与えてくれる、腕の試しがいのある、通常のZ3とはひと味違うレアなスポーツカーだ。

BMW Z3 Mクーペ(1998〜2002年/英国仕様)
BMW Z3 Mクーペ(1998〜2002年/英国仕様)

このZ3 Mは、BMWの上層部が希望したクルマではなかったものの、M部門の技術者たちによって非公式に開発が進められた。最終的に量産化が認められ、1997年にロードスターが、1998年にクーペが発売されている。

どちらも2002年まで生産が続けられたが、ラインオフしたのはロードスターが1万5322台だったのに対し、クーペはわずか1112台。結果として、Z3 MクーペはBMWの量産車として最も生産数の少ないモデルの1つになった。一部からの支持は今でも熱い。

長いボンネットに当初納められたのは、E36型のM3と同じ、自然吸気の3.2L直列6気筒エンジン。S50型ユニットと呼ばれる名機の1つで、欧州仕様では最高出力321psを発揮した。0-97km/h加速を5.0秒でこなす、俊足の持ち主だった。

一方で北米仕様の場合、排気ガス規制に伴い馬力が大幅に絞られている。エンジンはS52型ユニットとなり、243psに留まっている。

NA直6+5速MTのオールドスクールな喜び

2000年にマイナーチェンジを受け、新エンジンが登場。3.2Lの直列6気筒であることに変わりはないが、S54型へ変更され、最高出力は325psへ引き上げられた。後期型では、北米仕様にもこのエンジンが搭載されている。

また、電気信号で制御されるバイワイヤー式のスロットルが採用され、レスポンスが改善。安定性を高めるダイナミック・スタビリティ・コントロール(DSC)も後期型から導入されている。

BMW Z3 Mロードスター(1997〜2002年/英国仕様)
BMW Z3 Mロードスター(1997〜2002年/英国仕様)

小さなボディにパワフルな6気筒エンジンで、操縦性はワイルド。典型的なBMWらしいFRレイアウトであり、リミテッドスリップ・デフを搭載し、リアタイヤを思い切り振り回せる。

マイナーチェンジ前のZ3 MにはDSCが装備されておらず、やんちゃなBMWを飼いならすのはドライバー本人。それなりのスキルが求められる。

登場から20年以上が経過するが、その個性や魅力は薄れていない。ストレート6をレッドラインまで回せば、爽快なパワーと聞き惚れるサウンドが放たれる。トランスミッションは5速マニュアル。そのオールドスクールな喜びに、酔いしれてしまうことだろう。

Z3 Mのスタイリングは、万人受けするものではないかもしれない。クーペは特に、ピエロの靴というあだ名も付けられた。ひと癖ある見た目が理由の1つになり、大ヒットにはつながらなかったものの、近年は価値が認められ価格は上昇の一途だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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