素晴らしき3種の英国スポーツ トライアンフ・スピットファイア MGB ロータス・エラン 前編

公開 : 2022.05.22 07:05  更新 : 2022.08.08 07:11

MGAよりはるかに優れたMGB

エンジンは、トライアンフの1147cc 4気筒オーバーヘッド・バルブ。スタンダード・エイトとう小型サルーンのために、12年前に設計されたユニットだった。

最高出力は94ps足らず。ツインSUキャブレターで吸気音は勇ましく、車重は721kgと軽かったが、リアタイヤからスモークが立ち上ることはなかった。

MGB(1962〜1980年/英国仕様)
MGB(1962〜1980年/英国仕様)

ライトブルーに塗られウエストラインの絞られたスピットファイアが、同じくライトブルーのMGBと、グッドウッド・サーキットで肩を並べる。改めて、その2台の端正なスタイリングに見とれてしまう。

MGBは、スピットファイアより100mm以上長い。発売時に試乗したAUTOCARは、「先代のMGAより遥かに優れたクルマであることは、疑いようがありません」。と、称賛している。

このスタイリングを描き出したのは、デザイナーのドン・ヘイター氏。バランスが良くハンサムな容姿は、北米での成功に不可欠だった。新車時の価格は949ポンドと、スピットファイアより200ポンド高かったとはいえ、洗練性では明らかに勝る。

ボディはひと回り大きく、車重は972kgと軽量。スチールモノコック構造を採用し、剛性にも優れていた。ボディにはクラッシャブル・ゾーンが与えられ、安全性にも気が配られている。シートベルトはオプションだったが。

主任技術者のシドニー・エネバー氏は、MGAの基本構成を登用することでコストを抑えつつ、現代的なデザインと優れた操縦性を両立。ステアリングラックと、リアがリーフスプリングにリジットアクスルというサスペンション構造が引き継がれた。

技術的に確かな血筋を持つエラン

MGBのエンジンも、スピットファイアと同様に実績のあるもの。MGが属していたBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション社)のモデルが重宝していた、4気筒のBシリーズ・ユニットだ。

排気量は1798ccへ拡大され、ヘッドは簡素なオーバーヘッド・バルブ。ツインSUキャブレターを搭載し、最高出力96ps、最大トルク15.1kg-mと悪くない数字を発揮した。

ロータス・エラン 1600(1962〜1973年/英国仕様)
ロータス・エラン 1600(1962〜1973年/英国仕様)

当時のAUTOCARでは、先代のBシリーズからの進化を確認。簡単に160km/hのスピードへ届くと書き残している。

そしてもう1台、グッドウッド・サーキットのパドックを賑わせるのが、ブリティッシュ・グリーンに塗られたロータス。伝説のドライバー、ジム・クラーク氏が「喜びのためにロータス・エランを運転します」。と広告で言葉を残したスポーツカーだ。

スピットファイアとMGBは、少なくない妥協で開発された。しかし、エランはその対極。スタイリング的な華やかさは控えめでも、技術的な血筋は確かなものだった。

車重は688kgしかなく、ロータスの創業者、コーリン・チャップマン氏の軽量化に対する哲学を具現化していた。エリートと交代するように登場した、スチール製バックボーンシャシーとグラスファイバー製ボディで構成された、公道用モデルだ。

サスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン式、リアがチャップマンストラットと呼ばれる、ロータス独自のストラット式。ブレーキは前後ともにディスクが奢られている。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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