FR+MTのG82型は大アリ BMW M4 クーペへ試乗 今こそ選びたいマニュアルのM

公開 : 2022.05.25 08:25

英国には非導入だという、MTのG82型M4。英国編集部がドイツで、その魅力的な組み合わせを再確認しました。

英国では購入できないM4のMT版

グローバル化という表現が聞き飽きたとしても、世界が均質化していることは事実だ。ビッグマックがロサンゼルスと同じように、ロンドンや東京でも売られている。BMW 3シリーズや4シリーズも、ミュンヘンと同じように購入できる。

しかし、完全には同じではない。その違いが、海外の面白さでもある。ベルギーのマクドナルドに行けば、ビールも注文できる。ドイツや日本のBMWへ行けば、マニュアル・ギアのBMW M4を注文できる。

BMW M4 クーペ(6速MT版/欧州仕様)
BMW M4 クーペ(6速MT版/欧州仕様)

だが、英国では選べない。BMWが6速MTのM3やM4を提供しない理由は、中古車市場を見れば明らか。AT以外を選びたがる人が、多くいないためだ。

運転の手間数が増えることは間違いない。だが、トヨタスープラにMTをラインナップしている。ポルシェも911ターボの後輪駆動モデルに、MTを用意している。

英国BMWの上層部は、ウチも、と考えることはないのだろうか。日本やオーストラリア市場向けとして、右ハンドルのMT車は開発済みなのだ。

ロンドンの正規ディーラーでは注文できない、6速MTのG82型M4。では、8速ATとの違いはどの程度あるのか。今回、筆者は別件でドイツへ訪れた機会を利用し、広報用のM4をお借りして確かめることにした。

BMWは多くの市場へ標準のM4と、よりアグレッシブなM4 コンペティションの2種類を提供している。そのなかで、後輪駆動に6速MTという組み合わせが選べるのは素のM4。純粋主義なドライバーが選ぶ、という前提にある。

後付け感はゼロでなくてもMTを選びたい

一方で英国へ導入されているのは、通常のM4から30psパワーアップし、8速ATが組み合わされたM4 コンペティションのみ。知的な四輪駆動システム、xドライブをオプションで搭載することができる。

以前から筆者は、6速MTはどこか後付け感があり、8速ATの方がG82型のキャラクターに合っていると聞いていた。実際のところ、その印象は間違ってはいないようだ。

BMW M4 クーペ(6速MT版/欧州仕様)
BMW M4 クーペ(6速MT版/欧州仕様)

クラッチペダルは重く、跳ね返される硬さもあり、滑らかに変速するのが少々難しい。3.0L直列6気筒ツインターボ・エンジンは55.8kg-mの最大トルクを2650rpmから発揮し、殆どエンストしない。でも、ギクシャクした発進にはつながる。

今回の試乗車には、カーボン製のバケットシートが組まれていた。その座面の前部中央には、不自然なカーボンの膨らみがある。これが、クラッチペダルの操作時には違和感を生んでいた。

また、新しいM4の全幅はかなり広い。センターコンソールの中央にそびえるレバーを握るには、少し腕を伸ばす必要がある。

シフトレバーもスプリングの効きが強く、以前のBMWにも共通する、ゴムっぽい手応えも伴う。それでもストロークが短く、コクリとゲートに収まる感触が気持ちいい。

M4は息を呑むほど速く、ハイテクな雰囲気に溢れている。クラシカルに自らの腕でギアを選ぶという行為に、違和感を抱かないわけでもない。

それでも、もし筆者が自らのM4を注文するなら、間違いなく6速MTを選ぶだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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