【詳細データテスト】プジョー308 軽量さが生きる動力性能 期待どおりのハンドリング 後席は狭い

公開 : 2022.06.11 20:25  更新 : 2022.07.11 07:51

操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆

ステアリングとハンドリングには、魅力的ななめらかさとしなやかさがある。印象に残るのは、このクルマが有り余るほどのサスペンショントラベルとサスペンションの巧みさによって、特別な身のこなしをみせる類のそれだということだ。

スプリング、ダンパー、スタビライザーのレートは、極端ではないがセッティングが決まっている。また、結局は無駄なウェイトが乗っていないのが効いている。それらのコンビネーションは、路面とバトルするというよりは対話しているというほうがふさわしい。結果として、じつに心地いい、流れるような走りを生んでいる。

308のガソリン車は131psしかないが、それを最大限活用して、どの回転域でも活発に加速する。シャシーもうまくチューニングされていて、踊るようにコーナーを駆け抜ける。
308のガソリン車は131psしかないが、それを最大限活用して、どの回転域でも活発に加速する。シャシーもうまくチューニングされていて、踊るようにコーナーを駆け抜ける。    LUC LACEY

小径ステアリングホイールについては、テスター陣から批判的な意見も上がった。その理由は主として、これによりプジョーが、他メーカーより低速でのアシストを強めることを余儀なくされているからだ。その結果、速度によってステアリングの手応えがあまりにもはっきりと変わってしまうし、市街地では路面を感じる妨げになりうる。

しかし、開けた道に出ると、このクルマは多くのものを見せてくれる。ステアリングラックは、このクラスのハッチバックとしてはかなりスローだが、シャシーとの相性がよく、自然な俊敏さを感じさせ、手首の動きだけで軽い動きのスムースなコーナリングが可能になる。中級ファミリーカーには期待しないような楽しさだ。

タイヤは経済性重視のミシュラン・プライマシーだが、308のグリップは十分に強力で、コーナリングは歯切れよく、勢いを削ぐことはない。やや放任主義的なチューニングでありながら、ロールはなかなかよく抑えられている。パワーをかけながらのコーナー脱出でもラインをキープし、常時オンのトラクションコントロールはその存在をほとんど感じさせない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

コメント

おすすめ記事

 
×