サイドウォールが路面に食い込む トヨタGRダカール・ハイラックス T1+マシンへ同乗

公開 : 2022.07.12 08:25

2022年のダカール・ラリーで見事優勝を掴んだトヨタ・ハイラックスT1+。その助手席を、英国編集部が体験しました。

ダカールラリーの優勝マシンを体験

昨晩の夕食会では、2022年のダカールラリーで総合優勝を掴み取ったドライバー、ナッサー・アル・アティヤ氏と冗談交じりに会話を交わした。フランス語を交えて、コ・ドライバーのマシュー・ボーメル氏とともに。

一夜明けて、いま筆者の身体が固定されているのは、ボーメルも座ったことのある助手席。運転席のアル・アティヤの右足は、アクセルペダルを完全に踏み倒している。目前に、きついヘアピンカーブが迫る。

トヨタGRダカール・ハイラックス T1+(2022年仕様)
トヨタGRダカール・ハイラックス T1+(2022年仕様)

減速する様子がないドライバーの横顔を見る。思わず、フランス語で「クソッ」と叫びそうになった。

次の瞬間、トヨタGRダカール・ハイラックス T1+は急激に向きを変え、真っ赤な砂埃に包まれた。コーナーを立ち上がり、再び加速が始まる。

勇ましい走りは、外から眺めていれば、素晴らしい光景かもしれない。だが、車内での体験は別物。F1マシンの車載映像のように、周囲を流れる景色の速さを理解することができない。乗っているのは、車重2tのピックアップトラックだ。

今回筆者が招かれたのは、スペイン・バルセロナ郊外に広がるモントセラト山脈の麓。200ヘクタールという広大な敷地の、もと牧場だ。ロックダウン中に開発が進められ、現在はリゾートホテルのような建物付きのラリーコースが敷設されている。

オフロードを思い切り走りたいドライバーにとっては、夢のような場所かもしれない。そこに用意されていたのが、GRダカール・ハイラックス T1+。ダカールラリーの優勝マシンがどれほど有能なのか、確かめさせてもらうことができた。

ジャンプの着地を滑らかにこなす

果たしてその実態は、凄まじいポテンシャルだった。ボウラー・ブルドッグですら、生やさしいと表現したくなるほど。

先程通過したヘアピンは、このコースでは見せ場の1つ。ハイラックス T1+の能力が顕となるセクションといえる。

トヨタGRダカール・ハイラックス T1+(2022年仕様)
トヨタGRダカール・ハイラックス T1+(2022年仕様)

さらに、第2コーナーの先に大きなジャンピングスポットがあり、ここが1番のハイライト。ピックアップトラックが、2m近い高さまで勢いよく空中に飛び出す。サスペンションを縮め着地すると、その直後に下り坂のきつい右コーナーが待っている。

ハードコアにスイッチ類が並んだコクピットで、初体験といえるような時間が過ぎる。2周目からは、先ほど巻き上げた砂埃が残るなかを突き進む。正直いって、筆者が求める以上の興奮の連続といえる。

高速で走るハイラックス T1+が、ジャンプの着地も滑らかにこなすことへ感嘆する。減衰力は、強烈な負荷がかることを前提に、綿密に調整されているのだろう。

このマシンは、基本的にディーラーで購入できるハイラックスとは別物。スタイリングは似せてあるが、ボディパネルはすべてカーボンファンバー製だという。専用のチューブラー・フレーム構造の上に、被せられている。

また、今回助手席に座らせてもらったクルマは、開発用のプロトタイプ。ランドクルーザー譲りの3.5L V6ツインターボではなく、5.0L V8自然吸気が搭載されている。2021年のダカールラリーを走った、ハイラックスのユニットだそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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