長く待った甲斐があった 日産アリア 63kWh へ英国試乗 クラス・ベストのインテリア

公開 : 2022.07.16 08:25  更新 : 2022.07.19 15:31

100km/h近くまで衰えない加速力

カタログスペックもライバルに見劣りしない。試乗車は、前輪駆動のシングルモーターに63kWhの駆動用バッテリーが組み合された、エントリーグレード。最高出力218ps、最大トルク30.5kg-mを発揮する。

トップグレードとなるのが、日産がe-4ORCE(イーフォース)と呼ぶ、ツインモーターの四輪駆動。こちらは393psに61.1kg-mと、かなりの上昇となる。

日産アリア 63kWh イヴォルブ(欧州仕様)
日産アリア 63kWh イヴォルブ(欧州仕様)

航続距離は前輪駆動で402km。四輪駆動では駆動用バッテリーも大きくなり、529kmへ長くなる。ただし、ファミリー・クロスオーバーのターゲット層は、さほど動力性能を重視しない。支持割合でいえば、穏やかな前輪駆動モデルの方が高いはず。

すべてのアリアには、最大130kWの急速充電機能が付いてくる。悪くない容量だが、近年では必要最低限といっていいだろう。韓国のヒョンデキアは、350kWまで対応させているからだ。アリアで充電を待っている間に、アイオニックは出発している。

前輪駆動に218psでも瞬発力は鋭く、フロントタイヤのトラクションを危うくするほど。0-100km/h加速は7.5秒と良好で、100km/h近くまで加速力は殆ど衰えない。遅いクルマの追い越しも、郊外の一般道だけでなく、高速道路でも余裕でこなせる。

勢いよくスピードが増すとはいえ、アリアの運転が楽しいとまでは感じない。それでも前後の重量配分は、前輪駆動が48:52、四輪駆動が50:50と優れており、操作に対する反応は自然。安定感も高い。

期待を抱かせる魅力的なクロスオーバー

ステアリングホイールの操舵感は軽く、サスペンションは程よく角が取れている。コーナリングもそつなくこなせる。挙動は予想しやすく、ドライバーの運転する自信を高めてくれる。

低速域での洗練性は、フォルクスワーゲンID.4に引けを取らない。粗雑な舗装の修復か所を越えない限り、車内へ明確な振動が伝わってくることはない。

日産アリア 63kWh イヴォルブ(欧州仕様)
日産アリア 63kWh イヴォルブ(欧州仕様)

高速域でも、ロードノイズや風切り音は見事に抑えられている。車内で気になることは殆ど無いと思う。

管理状況の良くない英国の舗装路を走ってみるまでは、最終的な判断はしにくい。少なくとも、3代目デュアリスは英国の道路環境を踏まえて開発されている。その経験が、アリアにも落とし込まれていることに期待したい。

日産として2番目のBEV登場まで、12年も待つことになった。しかし、先駆者といえたリーフの作り込みの良さや合理的な訴求力を巧みに取り入れながら、魅力的なクロスオーバーを仕上げることに成功したといえそうだ。価格価値にも優れている。

日産というブランドの、変革の1ページといえるかもしれない。アリアに乗ったことで、筆者は今後の展開に大きな期待を抱くことができた。

日産アリア 63kWh イヴォルブ(欧州仕様)のスペック

英国価格:4万7480 ポンド(約792万円)
全長:4595mm
全幅:1850mm
全高:1660mm
最高速度:160km/h
0-100km/h加速:7.5秒
航続距離:402km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:1960kg
パワートレイン:AC誘導同期モーター
バッテリー:63kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:218ps
最大トルク:30.5kg-m
ギアボックス:シングルスピード

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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