EVはモデル間の違いが小さい? アウディQ4 eトロン(7) 課題の差別化 長期テスト

公開 : 2022.07.16 09:45

純EVでのプレゼンス拡大を狙うQ4 eトロン。電動時代における上級ファミリー・クロスオーバーの魅力を確かめます。

積算7620km 長く、信じられる航続距離

アウディQ4 eトロン・スポーツバックで1週間通勤すれば、BEV(バッテリーEV)へ自分が求めるものがはっきり見えてくる。長く、表示が信じられる航続距離だ。

その点で、508kmがうたわれるQ4 eトロン・スポーツバックの能力は素晴らしい。一方で、315kmという短めの航続距離を持つレクサスUX 300eは、快適なシートで身体を癒やしてくれる。こちらの魅力も捨てがたい。

アウディQ4 eトロン・スポーツバック 40 スポーツ(英国仕様)
アウディQ4 eトロン・スポーツバック 40 スポーツ(英国仕様)

積算9031km VWグループ内での差別化

今回はいつものマーク・ティショーに代わって、イリヤ・バプラートがレポートさせていただきたい。自分は長期テストでレクサスUX 300eを担当しているが、比較のためにQ4 eトロンを1週間お借りすることにした。

ミドルクラスの電動SUVとして、2台はライバル関係にある。また、これまでQ4 eトロンには運転したことがなかったためだ。

ブルーのレクサスUX 300e プレミアム・プラスと、シルバーのアウディQ4 eトロン・スポーツバック 40 スポーツ
ブルーのレクサスUX 300e プレミアム・プラスと、シルバーのアウディQ4 eトロン・スポーツバック 40 スポーツ

さて、欧州で展開されているシュコダと、フォルクスワーゲン、アウディというブランドの差別化は、数年前の方が明確だったと思う。フォルクスワーゲンはより幸せを感じるような、クラスレスなブランドに位置していた。

シュコダは価格価値に優れる選択であり、アウディは上級で、先進的な技術をフォルクスワーゲン・グループではまっ先に取り入れるモノづくりが特徴といえた。だが、MEBプラットフォームの登場で、その差別化は曖昧になったといえる。

BEVはモデル間での印象の差が小さい?

実際、アウディQ4 eトロンを運転してみた印象は、フォルクスワーゲンID.4とだいぶ近いものだった。インテリアはソリッドで上質で、空間が広々としていて、人間工学的にも良好という点は両者に共通している。

快適なシートと、優れたエアコンの操作パネルが備わり、タッチモニターの反応もいい。一方で、廉価ブランドのシュコダ・エンヤックの方が、インテリアは価格以上に上質だと感じられることは課題の1つといえる。

アウディQ4 eトロン・スポーツバック 40 スポーツ(英国仕様)
アウディQ4 eトロン・スポーツバック 40 スポーツ(英国仕様)

パワートレインは基本的に同一。駆動用モーターは瞬間的に不足ないトルクを発揮してくれ、低重心で、運転した印象も近いようだった。

アウディの方が、乗り心地は明らかに滑らかではある。だが、手頃なエンヤックにアダプティブダンパーを装備させれば、その違いも殆どなくなるのではないだろうか。

違うメーカーやブランドであっても、BEVは運転した印象の差が小さいという意見を、最近はしばしば耳にする。見た目も似通っていると。だが、その意見がすべてには当てはまらないと、筆者は思う。

プラットフォームを共有する、ヒョンデアイオニック5キアEV6は明らかに異なっているからだ。タッチモニターや回生ブレーキの制御など、一部は確かに似ているが、ボディもインテリアも、デザインはまったくの別物だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    役職:編集者
    自動車業界で10年以上の経験を持つ。欧州COTYの審査員でもある。AUTOCARでは2009年以来、さまざまな役職を歴任。2017年より現職の編集者を務め、印刷版、オンライン版、SNS、動画、ポッドキャストなど、全コンテンツを統括している。業界の経営幹部たちには定期的にインタビューを行い、彼らのストーリーを伝えるとともに、その責任を問うている。これまで運転した中で最高のクルマは、フェラーリ488ピスタ。また、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIにも愛着がある。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト アウディQ4 eトロンの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

コメント

おすすめ記事

 
×