V8エンジンはこの世代限り BMW M3(E92型) クーペかサルーンか 英国版中古車ガイド

公開 : 2022.08.04 08:25

自然吸気V8エンジンを搭載した唯一のM3が、E92型。歴代で最も多能だったと、専門家が評するモデルを振り返ります。

NA V8エンジンを搭載した豪快なM3

高いビジョンを持って開発が進められたであろう、E92型のBMW M3。今となっては、その存在に感謝したい気持ちになる。従来までの流れを打ち破るように、フロントに押し込まれたのは自然吸気のV8エンジン。豪快なM3だった。

排気量は4.0Lで、右足へ力を込めれば8300rpmまで一気に吹け上がった。最高出力は420ps。先代のE46型M3が342psだったから、大幅なパワーアップを果たしていた。小さなハッチバック、1台分の馬力が追加されたといっていい。

BMW M3(E92型/2007〜2013年/英国仕様)
BMW M3(E92型/2007〜2013年/英国仕様)

フロントエンジン・リアドライブというレイアウトは踏襲し、E92型でもドライバー次第でテールスライドは自在。0-100km/hを4.7秒でこなすが、パワー任せの直線番長ではなく、身のこなしは不足なく鋭い。

コーナーへ飛び込めば、素晴らしいシャシーバランスが生み出すグリップ力と操縦性に惹き込まれるはず。マッスルカー的ではあるかもしれないが、全方位が磨き込まれている。

多彩なドライブモードを搭載し、シーンに応じてクルマを調整できることも美点。高速道路をしっとりクルージングさせることも、サーキットでラップタイムを削ることも、それぞれが得意分野だ。

アクセルレスポンスやパワーステアリングのアシスト量、ダンパーの硬さ、トラクション・コントロールの介入度合いなどを、ドライバーが任意に選べる。その場に合わせた能力を与えることが可能だった。

ボディはクーペとオープン、サルーンの3種類

登場は2007年で、当初は6速MTだけの設定だったが、2008年に7速デュアルクラッチAT(DCT)が追加。MTはクルマと一体感の濃いドライビング体験を与えてくれるが、7速ATの乗りやすさも支持され、現在ではMTより残存数が2倍ほど多い。

インテリアは、それまでのM3のレシピに従ったもの。迫力を増したスタイリングに歩調を合わせるように、手が加えられている。Mのエンブレムが随所に施され、肉厚なリムのステアリングホイールが装備される。だが、全体の雰囲気は控えめだ。

BMW M3(E92型/2007〜2013年/英国仕様)
BMW M3(E92型/2007〜2013年/英国仕様)

ドライビングポジションは良好。クーペでも、リアシートには身長が180cm位ある大人が快適に座れる。荷室が広く、実用的でもある。

E92型のM3には、2ドアクーペとコンバーチブル、4ドアサルーンという3種類のボディタイプが用意されていた。最軽量なのはクーペで、車重は1655kgとなっている。

サルーンは25kg増し。日本には未導入だったコンバーチブルは、金属製のフォールディング・ハードトップを採用しており、230kgも重い。

とはいえコンバーチブルなら、ルーフを開いてV8エンジンのサウンドを生で楽しむことができる。高回転域まで回せば、マッスルカーとスーパーカーがミックスされたような、唯一のシンフォニーを堪能できる。この音響だけでも、手に入れる価値はある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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