還暦を迎える英国の名車 BMC ADO16を振り返る モーリス1100/MG1100 中編

公開 : 2022.09.03 07:06

英国の小型ファミリーカーを定義したといえる、ADO16シリーズ。6ブランドから展開された名車を、英国編集部が振り返ります。

豪華さに驚かされるプリンセス1100

オースチン1100の発表から1年後の1964年に、上級モデルとしてヴァンデンプラ・プリンセス1100が登場。英国価格は895.14ポンドで、6気筒エンジンを搭載したヴォグゾール・ヴェロックスに並ぶ金額だったが、充分なブランドの訴求力があった。

アンディ・ビーヴァン氏が所有する1967年式のヴァンデンプラ・プリンセス1100へ近づくと、その豪華さに感心してしまう。インテリアはレザーで仕立てられ、天井の内張りはウール。カーペットには毛足の長いパイルが用いられている。

ヴァンデンプラ・プリンセス1100(1967年式/英国仕様)
ヴァンデンプラ・プリンセス1100(1967年式/英国仕様)

フロントシートはリクライニングでき、シガーライターや折りたたみ式のアームレスト、外気導入できるベントも備わる。リアシート側には、収納できるピクニックテーブルが付く。

フォグライトとバックライトも装備され、ドライバーの正面にはスピードのほかに多くの補助メーターも据えられている。ヴァンデンプラという銘柄ふさわしい、充実装備だ。

このブラウンのプリンセス1100は、2018年からビーヴァンのもとにあるという。「自分はADO16で運転を学びました。プリンセスは兄から譲り受けたものです」。と、これまでの経緯を振り返る。

「MG仕様となる55psのエンジンが搭載されていて、オースチンやモーリスより動力性能には余裕があります。一番気に入っているのは、インテリアですね」

「シートにはアームレストが付いていて、グローブボックスのリッドにはカップホルダーが付いています。細部に至るすべての部分が、ヴァンデンプラ1100を際立たせる要素だと思います」

6種類のブランドが販売したADO16シリーズ

1965年にBMCが発表したのが、控えめに素晴らしいと自ら表現したウーズレー1100だ。1957年に登場したウーズレー1500の後継モデルという位置づけで、英国価格は767.9ポンドだった。

より高めの価格設定に合わせ、レザーの内装と、ゴーストライトと呼ばれたラジエターグリルでほんのり灯るロゴマークが特徴といえた。複雑に階層付けられたBMCのヒエラルキーのなかでは、エンジンを共有するMG 1100の上に据えられていた。

ウーズレー1100(1965年式/英国仕様)
ウーズレー1100(1965年式/英国仕様)

さらに、ライレー・ケストレルも同時期に登場している。こちらはウーズレー1500の兄弟モデル、ライレー・ワンポイント・ファイブの後継モデルという位置付けだった。

この時点で、ADO16シリーズは6種類のブランドが販売する状況になっていた。マーケティング的な混乱があったことは否めないだろう。

イアン・マッケンジー氏は、父とのオースチン1100 MkIとの記憶に影響を受け、2016年にウーズレー1100を購入したという。その時点で、彼のクルマがツートーン塗装で仕上げられた唯一の現存車両でることが判明したそうだ。

トーガ・ホワイトとアイランド・グリーンに塗り分けられたウーズレーは、当時の映像から飛び出して来たように美しい。「横に長いストリップ・スピードメーターの動きや、走行中の穏やかなボディの揺れ具合が好きなんですよ」。とマッケンジーが微笑む。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・ロバーツ

    Andrew Robrts

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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