世界最高の座を狙う ロールス・ロイス・シルバーシャドー キャデラック・セビル ジャガーXJ12 後編

公開 : 2022.09.25 07:06

感心するほどの動力性能で運転が楽しい

車重は1895kgと軽いとはいえないが、それを感じさせない。ダンパーやスプリングのレートは完璧で、路面のワダチや舗装の剥がれをなかったことにしてくれる。それでいて、ロールス・ロイスキャデラックとは一線を画す姿勢制御も叶えている。

V型12気筒へ送るガソリン量を増やせば、素早く走ることにも驚く。別の機会のテストでは、最高速度233km/h、0-97km/h加速7.5秒という、45年前のクルマとして感心するほどの動力性能を備えることも確かめている。

ジャガーXJ12 LWB(1973〜1979年/英国仕様)
ジャガーXJ12 LWB(1973〜1979年/英国仕様)

中回転域でのトルクは、V8エンジンの方が有利ではある。それでも、高回転域までリニアに湧き出るパワーのおかげで、運転するのが楽しい。

シルバーシャドーも運転は楽しいものの、速度域は低め。車重はXJ12より300kg以上重く、路面のあらゆる不正をボディが威圧的になだめこむ。高めの着座位置のおかげで、タイヤの存在感も遠い。ロールス・ロイスへ期待する味わいだ。

しかし今回試乗したグレートブリテン島南部、ニュー・フォレストに広がるカーブの続く道では少々手に余る。ボディがゆったりと傾き、ステアリングホイールを丁寧に回す必要性を感じる。

こんな区間は、ロールス・ロイスなら80km/hくらいで走るのが良い。滑らかな走行時の質感は、他の追随を許さない。周囲をまったく意に介さない隔離性や淡白な印象が、シルバーシャドーの哲学を端的に表している。

最近は、この特長へ共感する人が増えている。シルバーシャドーの取引価格は、上昇傾向にあるという。

ドライビング体験で優れるキャデラック

他方のキャデラックは、意外にもシルバーシャドーよりドライビング体験では優れていた。量産然としたインテリアの印象は別として、特に乗り心地の良さには驚かされる。

呆れるほど軽く回せるステアリングホイールに慣れれば、予想以上の姿勢制御で連続するコーナーを処理してくれる。アメリカ車として、という括りを加える必要はない。

ゴールドのロールス・ロイス・シルバーシャドーIIとブラックのキャデラック・セビル
ゴールドのロールス・ロイス・シルバーシャドーIIとブラックのキャデラック・セビル

セビルで惜しいのが動力性能。0-97km/h加速には12.5秒を要する。アクセルペダルを倒しきっても、169km/hが精一杯。内装の雰囲気も考えれば、総合的にはロールス・ロイスに軍配があがる。

世界最高のクルマとして順位付けしていく場合、まずはブランド・イメージで足が切られる。内装の設えや、長距離移動時の快適性などがそれに続く。ロールス・ロイスの勝利は、明確なものだといって良い。

路上での存在感やドライバーへの訴求力、価格や装備などを総合的に比較すると、キャデラックも同じ土俵に立てている。それでも、最高とまではいえないだろう。

筆者個人としては、全体的な水準の高さとパッケージングの特別さから、ジャガーXJ12を3台のベストに選びたいところ。実際、長距離を高速で走らせたら1977年当時は世界最高の1台だった。

協力:ロールス・ロイス・エンスージアスト・クラブ・ロジャー・ケンプ氏、ジャガー・ドライバーズ・クラブ、ベン・コールマン氏、国立自動車博物館

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

世界最高の座を狙う ロールス・ロイス・シルバーシャドー キャデラック・セビル ジャガーXJ12の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

ロールス・ロイスの人気画像