ハイウェイの145kmを全力疾走 自作のロータス・カールトン 平均記録は264km/h 前編

公開 : 2022.10.16 07:05

ネバダ州の砂漠を貫くレースへ、ロータス・カールトンで挑んだジョー・エリス氏。英国編集部がそのマシンをご紹介します。

ハイウェイ318号線の145kmを疾走する

アメリカのレース主催者はセンスがいい。ナスカーのサブウェイ・ハラペーニョ250パワードバイ・コカ・コーラや、トリート・マイ・クロット・コム300など、巧みにスポンサー名を絡めてくる。

だが、すべてとは限らない。シルバーステート・クラシック・チャレンジと、その姉妹イベント、ネバダ・オープンロード・チャレンジは単刀直入といえる。それでも内容はエキサイティング。マッド・マックスばりに、公道をアクセル全開で疾走するレースだ。

ジョー・エリス氏が仕上げたヴォグゾール(オペル)・オメガがベースのロータス・カールトン(2000年)
ジョー・エリス氏が仕上げたヴォグゾールオペル)・オメガがベースのロータス・カールトン(2000年)

イメージするマシンは、シボレーコルベットフォードマスタングだと思う。あるいは、ランボルギーニカウンタックか。ロータス・カールトンは出てこないだろう。英国人ドライバー、ジョー・エリス氏以外の頭には。

控えめな彼は、20年ほど前の自身の成果を、これ見よがしにすることはない。頭にかぶった記念品のキャップと、トランクリッドのステッカーが、戦果を暗黙に示す程度だ。

イベント名のとおり、開催場所はアメリカ・ネバダ州、通称シルバーステート。出場車は2分間隔で次々にスタートし、封鎖したハイウェイ318号線を、いかに速く走り切るか競い合う。コースは90マイル(約145km)に及び、完走すら難しいという。

エリスにとってモータースポーツは目標とするものではなかったが、ある休日に思い立ったらしい。「アメリカは1990年代に旅行したことがありました。自動車雑誌に影響を受けていましたね」

生きて完走する経験を得たコルベットC4

「ジョン・ヘネシー氏が三菱3000GT(GTO)でレースを勝利したストーリーを読み、強い興味を抱きました」。とエリスが話す。後にハイパーカーのヘネシー・ヴェノムを生み出した人物だ。

「テキサス州に住んでいた友人へ頼み、ヘネシー・パフォーマンス社のマネージャーへ連絡を取り、ネバダ州の観光局へつないでもらいました。自分の招待が決まり、スタッフとしてレースを手伝うことになったんです」

ジョー・エリス氏が仕上げたヴォグゾール(オペル)・オメガがベースのロータス・カールトン(2000年)
ジョー・エリス氏が仕上げたヴォグゾール(オペル)・オメガがベースのロータス・カールトン(2000年)

パドックでの経験は、翌年の参戦切符へ展開した。「オープンロード・チャレンジには、レンタカーを使う人もいました。バイパーにロールケージを組んだようなクルマを借りられたんです」

「わたしはある店で、少々くたびれたシボレー・コルベットC4を借りました。それにレースのステッカーを貼って、時速105マイル(約169km/h)クラスに参戦。とりあえず、生きて完走という経験を得ました」

エリスの参戦は、主催者の関心を呼んだ。英国人が英国車で戦う姿を見たいと要望したらしい。その意向に、彼は充分なソリューションで応えた。

「ヴォグゾール(英国オペル)でレースした経験があり、ロータス・カールトンが速いことも知っていました。速く走るチューニングの1つとして、信頼性が重要なことも。全開で長距離を走るイベントに、何が求められるかじっくり考えましたね」

「実際、多くの人が修理に時間を割いていました。ネバダ州は暑く乾燥しているので、パワーと空力特性に優れたロータス・カールトンが良さそうだと思ったんです。あるいはベントレー・ターボRか。命のために、ボディは頑丈な方が良かったですし」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・フィリップス

    Jack Phillips

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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