ゴードン・マレーも所有 GSMフラミンゴ 1500 ケント・エンジンの黄色いバナナ 後編

公開 : 2022.12.17 07:06

眩しいイエローに塗られたGSMフラミンゴ。南アフリカで誕生した小さなグランドツアラーを、英国編集部がご紹介します。

熱心なクルマ好きなら長距離も楽しめる

少量生産のスポーツカー・メーカーとしては珍しく、GSMが優先したのは安全性。フラミンゴの一般道との親和性や、アンダーステア傾向のシャシーは、あえて彼らが与えた特性だった。

ラバーコーン・サスペンションと、高回転域で滑らかさに欠けるケント・ユニットとの組み合わせで、走行中は落ち着かない。ショートなギア比も、それに加担している。

GSMフラミンゴ 1500(南アフリカ仕様)
GSMフラミンゴ 1500(南アフリカ仕様)

フラミンゴを上質なグランドツアラーとは呼びにくいものの、GSMが用意できるリソースを巧みに組み合わせることで、熱心なクルマ好きが長距離ドライブも楽しめる内容にはある。普段使いできつつ、週末を謳歌するスポーツカーにもなり得る。

1960年代水準で見ても、洗練されてはいない。しかし可能な限り快適に過ごせるよう、装備は考えられている。ダッシュボードにはソフトパッドが与えられ、フロアにはちゃんとしたカーペットが敷かれている。

フロントシートの後ろには意外と広い荷室があり、メーターパネルに並ぶ計器類も充実。ダッシュボードにはビニールレザーが張られ、スイッチ類にはレーシングカーのようにラベルが貼られている。

フォード・タウヌス用エンジンを搭載した初期のフラミンゴには、グレン・ロクストン氏がオーナーのモデル以上に整ったダッシュボードが与えられていた。ただし、南アフリカ生まれでありながらベンチレーションは備わらない。もちろんヒーターも。

サイドウインドウは上下に開閉するが、雨の日は確実に困る。2枚に別れたリアウィンドウには熱線もなく、簡単に曇る。

限られていたGSMの開発予算

フラミンゴは晴天に乗るクーペだ。ドライバーを温めてくれるのは、小さなケント・ユニットが放つ熱のみ。とはいえ、GSMが英国での販売を真剣に考えていれば、ヒーターは装備されたことだろう。

特徴的なリアウインドウは、見た目の印象が良いものの、運転時もそうとは限らない。ルーフラインは低く、平均的な身長のドライバーでも頭が天井に当たりそうになる。背もたれを倒し、腕を伸ばした運転姿勢を余儀なくされる。

GSMフラミンゴ 1500(南アフリカ仕様)
GSMフラミンゴ 1500(南アフリカ仕様)

この姿勢で振り返ると、目線にあるのはルーフの後端。リアウインドウ越しには、近い距離の路面程度しか見えない。駐車時には役立つかもしれないが、本来はもっと高い位置に据えられるべきだった。フラミンゴの後ろ姿も、一層美しくなったかもしれない。

フロントガラスは、オースチンA40 ファリーナというコンパクトカーのものが流用されている。前方視界は素晴らしい。だが、ボディに対していささか大きすぎるように思う。

GSMの開発予算が限られていたことは、パッケージングからも伝わってくる。最小回転直径は大きく、ペダルは思い切り外側へオフセットしている。右足が、フェンダーアーチに食い込むような感覚すらある。

もしこれがファミリーカーなら、残念な評価につながっただろう。しかし純粋なスポーツカーの場合は、特徴として見逃せる不備にならなくもない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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