ハタチぶんの進化 フォルクスワーゲン・ゴルフ R ゴルフ R32 Mk8とMk4を比較試乗 後編

公開 : 2023.01.21 09:46

コーナーでの一体感に感心するMk8のR

Mk4の操縦性の評価は、当時から決して高いものではなかった。ところが実際に攻め込んでみると、コーナー出口でのパワーオンに対してニュートラルな挙動を示す。バランスは優れる。

同時に、最新モデルのボディ剛性の高さも実感させる。R32は、負荷が高まると僅かにボディがねじれ、ダンパーやブッシュのヘタリとは別の、姿勢制御の緩さが垣間見れる。

フォルクスワーゲン・ゴルフ R32(Mk4/2002〜2003年/欧州仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフ R32(Mk4/2002〜2003年/欧州仕様)

とはいえ、意識すればという程度。R 20イヤーズに負けないくらい、サスペンションがうねったグレートブリテン島のアスファルトをいなす。硬めでも、落ち着きは失いにくい。ブレーキペダルの感触は比較すれば柔らかいものの、制動力は充分ある。

唯一筆者が気になったのはステアリング。油圧パワステは電動パワステより良いという考えは、このゴルフには当てはまらないようだ。R32のステアリングホイールは重たいが、感触が殆ど伝わってこない。

スタッドレスタイヤの影響とも考えた。だが、2003年の試乗レポートを振り返ると、同様に指摘されていた。

祖先を存分に堪能して、R 20イヤーズへ戻る。感触に優れるステアリングがもたらす、コーナーでの一体感に感心する。気温は4度で、ブリヂストン・ポテンザ・タイヤには好条件とはいえないにも関わらず。

秀でたグリップ力と洗練性で、どんなルートでもR32より20km/hほど速いペースを保てる。操縦性の限界を探る過程が楽しい。しかしエンジンのイベント性は低い。ドライビング体験がより楽しいかと聞かれると、YESとは即答しにくいのが本音。

カテゴリーを牽引する立場は変わらない

郊外の道を従来以上のハイペースで走れる能力こそ、ゴルフ Rが目指したもの。快音を響かせる狭角V6エンジンと、ノーマルでは組み合わされていた6速MTが、2002年にフォルクスワーゲンが目標を達成できる手段だった。

技術は進化し、メカニズムでもインテリアでもゴルフ R 20イヤーズの能力は高められている。クルージング時の燃費性能も、飛躍的に向上している。

ホワイトのフォルクスワーゲン・ゴルフ R 20イヤーズと、ブルーのフォルクスワーゲン・ゴルフ R32(Mk4)
ホワイトのフォルクスワーゲン・ゴルフ R 20イヤーズと、ブルーのフォルクスワーゲン・ゴルフ R32(Mk4)

初代ゴルフ GTIがホットハッチの雛形を形成したように、ゴルフ Rはスーパー・ホットハッチの原型となった。BMW M135iやメルセデスAMG A35、アウディRS3といったライバルに大きな影響を与えてきた。

同クラスのモデルのなかで、価格も踏まえると最も完成度が高いであろうことは事実。フォルクスワーゲン・ゴルフ Rがカテゴリーを牽引する立場にあることは変わらない。ハッピーバースデー、R。

ゴルフ R 20イヤーズとR32のスペック

フォルクスワーゲン・ゴルフ R 20イヤーズ(欧州仕様)

英国価格:4万8095ポンド(約769万円)
全長:4290mm
全幅:1789mm
全高:1465mm
最高速度:270km/h
0-100km/h加速:4.6秒
燃費:12.7km/L
CO2排出量:174-179g/km
車両重量:1480kg
パワートレイン:直列4気筒1984ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:332ps/5600-6500rpm
最大トルク:42.7kg-m/2100-5500rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

フォルクスワーゲン・ゴルフ R32(Mk4/2002〜2003年/欧州仕様)

英国価格:2万2340ポンド(新車時)/3万ポンド(約480万円)以下(現在)
全長:4176mm
全幅:1735mm
全高:1425mm
最高速度:246km/h
0-100km/h加速:6.4秒
燃費:8.7km/L
CO2排出量:−
車両重量:1477kg
パワートレイン:V型6気筒3189cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:240ps/6250rpm
最大トルク:32.4kg-m/2800-3200rpm
ギアボックス:6速デュアルクラッチ・オートマティック(ドイツのみ)

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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