ハタチぶんの進化 フォルクスワーゲン・ゴルフ R ゴルフ R32 Mk8とMk4を比較試乗 後編

公開 : 2023.01.21 09:46

GTI以上のホットハッチが目指された「R」の登場から20年。初代のR32と最新版の特別仕様を、英国編集部が比較しました。

高級感が漂うMk4ゴルフのインテリア

撮影ポイントへ辿り着き、同僚が試乗していたフォルクスワーゲン・ゴルフ R32と対面する。改めて観察することになったが、思わず感動してしまった。

同社のヘリテイジ部門が管理するクルマは、2003年式。走行距離は2万8000kmと短く、コンディションは完璧。特にインテリアには、最新の8代目ゴルフ以上の高級感が漂っている。センターコンソールの表面が少し粘ついていたけれど。

ホワイトのフォルクスワーゲン・ゴルフ R 20イヤーズと、ブルーのフォルクスワーゲン・ゴルフ R32(Mk4)
ホワイトのフォルクスワーゲン・ゴルフ R 20イヤーズと、ブルーのフォルクスワーゲン・ゴルフ R32(Mk4)

アルミニウム製のトリムが要所要所に用いられ、エアコンの送風口のフィンもきれいに閉まる。小物入れのリッドにはスプリングが付いていて、5段階に強さを選べるシートヒーターのスイッチもタッチがイイ。

ドライビングポジションからは、20年という経過を感じる。スポーティなケーニッヒ社製のバケットシートは、座面が高め。ステアリングホイールはテレスコピック調整できるものの、1番手前側でも筆者には遠い。

ダッシュボードの中央、低い位置にナビゲーション用の画面がある。インフォテインメントという言葉が一般化する前の代物で、解像度は荒く英国の地図はインストールされていない。当時は2500ポンドのオプションだった。

特別なエンジンを積むことを隠さないR32

走り出しても、R32の感動は続く。自然吸気の3.2L VR6ユニットは即座に目覚め、静かで滑らかなアイドリングを始める。4気筒ターボが一般化した2023年にあって、特別なエンジンであることを隠さない。

低回転域でのノイズは太く威圧的。高回転域では一般的なV6サウンドに落ち着くようだが、3500rpmを超えた辺りでの張り詰めたトーンがうれしい。

フォルクスワーゲン・ゴルフ R32(Mk4/2002〜2003年/欧州仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフ R32(Mk4/2002〜2003年/欧州仕様)

現代のモデルに乗り慣れていると、加速が鋭いとまでは感じない。最高出力は240psあるが、車重は1477kgとゴルフ R 20イヤーズの1480kgと大きくは違わない。

トランスミッションは6速DSGが組まれている。同社として、デュアルクラッチATを搭載した初の量産モデルだった。ただし、ドイツ本国で500台の限定。新しい技術を、他国へ提供する準備が整っていなかったためだ。

最新のDSGと比べると、エンジンブレーキが弱くブレーキペダルを頼りがちで、クラッチは若干滑りが多い印象だが、それ以外は良く働く。運転に対して即時的に応え、スムーズに変速を繰り返す。

当時の従来的なトルコン式オートマティックや、オートメイテッド・マニュアルと比べれば、間違いなく新時代の到来を告げるものといえた。現代の四輪駆動のホットハッチでは、他のメーカーでもマニュアルは既に選べない。

北米市場では、まだマニュアルのゴルフ Rも選択できる。だが、欧州市場のドライバーは積極的に選んでこなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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