モータースポーツへ接近したのか メルセデスAMG SL 55 ポルシェ911 カレラGTS 比較試乗 前編

公開 : 2023.02.04 09:45

63では585psと81.4kg-mを発揮

量産モデルに搭載され始めたのは2015年からだが、最新のSL用としては、吸排気系へ改良が施され、専用品のオイルパンが組まれている。今回お借りした55グレードの場合、最高出力は475ps、最大トルクは71.2kg-mがうたわれる。

これで足りない人のために、63もある。こちらのチューニングでは最高出力が585psへ高められ、最大トルクは81.4kg-mを生み出す。最高速度も313km/hへ上昇する。

メルセデスAMG SL 55 4マティック+ プレミアム・プラス(英国仕様)
メルセデスAMG SL 55 4マティック+ プレミアム・プラス(英国仕様)

9速オートマティックと、4マティック+と呼ばれる4輪駆動システム、後輪操舵システムなどは55と63で共通。ちなみに、さらにパワフルなPHEV版も控えている。4気筒ターボの43が、エントリー側に据えられる。

SL 55の場合、サスペンションはセミ・アクティブダンパーにアンチロールバーという組み合わせ。SL 63では、マクラーレンの設計にも似た、クロスリンク状態の油圧ダンパーが装備される。

後者の方が洗練されたアイテムだが、約17万5000ポンド(約2800万円)の英国価格を踏まえれば当然といえるかもしれない。一方、SL 55は約14万8000ポンド(約2368万円)から。アクティブ・エンジンマウントと、電子制御LSDも省かれる。

内容を確認していくと、最も能力に長け、表現力が豊かな最新のSLは63だといえる。一方で、911 カレラGTS カブリオレの英国価格は約12万5000ポンド(約2000万円)から。比べればだいぶお手頃だ。

長距離を安楽に走る能力では911を凌駕

さて、SL 55は、ロンドンからグレートブリテン島の中東部に位置するノース・ヨーク・ムーアズ国立公園まで、約400kmを短時間に走りきった。凍えるような寒さでも。

このような上級モデルの場合、醸し出される雰囲気はとても重要。運転席に座っていると、ロングノーズであるこをとまじまじと実感するが、コクピットはAMG GTとは異なり、そこまでタイトではない。

メルセデスAMG SL 55 4マティック+ プレミアム・プラス(英国仕様)
メルセデスAMG SL 55 4マティック+ プレミアム・プラス(英国仕様)

ボディの低い位置へ埋まるような印象はなく、リアタイヤの接地感がしっかり伝わってくる。ロードノイズはAMG GTや911とは別次元の静かさ。内装はレザーで仕立てられ、ドライバーの正面では大きなモニターが光る。

コンフォート・モードを選んでいれば、乗り心地はいったって快適。V8エンジンは過度に主張することなく、淡々と仕事をこなす。一気に往復の800kmでも運転できそうな、心地良さがある。SLらしい、古き良き味わいを今に残している。

反面、沢山の外光が降り注いだ、先代のR231型の雰囲気とも異なる。驚くほど大容量の荷室も備わってはいない。だがそれは、リアシートが補う。ポルシェ911も荷室は狭いが、こちらはグランドツアラーに軸足を持たない。

長距離を走るという能力で、SL 55が911 カレラGTS カブリオレを凌駕することは間違いないだろう。V8エンジンはスムーズで、外界との隔離性も高い。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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