シンプルな運転の楽しさ ヒョンデ・キャスパーへ試乗 韓国版軽自動車のクロスオーバー 

公開 : 2023.02.09 08:25

今の韓国で人気を博しているという、小型クロスオーバーのキャスパー。英国編集部が現地でその魅力を確かめました。

オンラインで販売される小型クロスオーバー

今回試乗した小さなクロスオーバーは、ヒョンデ・キャスパーという。クルマ離れが進む都市部の若年層にアピールするべく、友達のような存在が目指されている。確かに個性的な見た目で、なかなか可愛いカタチだ。

このキャスパーは、同社の多彩なラインナップのなかでは最小で、韓国では2022年に発売されている。i10と呼ばれるコンパクト・ハッチバックと同じプラットフォームを採用し、全長は3595mm、全幅は1595mmしかない。

ヒョンデ・キャスパー 1.0T-GDi(韓国仕様)
ヒョンデ・キャスパー 1.0T-GDi(韓国仕様)

ちなみにこのサイズは、韓国でいう軽自動車に相当する。ヒョンデはi10を英国で販売しており、兄弟モデルとなるキア・ピカントも売られているが、英国を含む欧州での販売計画はないという。小さなクルマを好む人が多いとしても。

安全規制や環境規制など、欧州市場の要求は厳しい。価格の安い小型車で、これらを叶えつつ充分な利益を得ることは難しい。他のメーカーが、小型車の開発へ二の足を踏んでいる状況も、これに起因する。

韓国では、キャスパーはオンラインでのみ販売されている。ディーラーを介する体制がないことも、輸出されない理由の1つだろう。それでも、現地ではかなりの人気を博しているという。

実際、都市部の渋滞に出くわすと、少なくない台数のキャスパーを目にする。小さいボディだが、モダンな見た目にLEDライトが眩しく光り、良く目立つ。

特徴的な見た目 洗練不足のメカニズム

キャスパーは、トヨタ・アイゴXのように車高が持ち上げられたハッチバックではなく、明確にクロスオーバー側にある。スズキ・イグニスへ近い。

上下にライトが重なるフロントマスクや、格子状の模様が入るテールライトなど、デザインには触れたくなる特徴が多い。Bピラーが太く、Cピラー部分のドアハンドルには、キャラクターのような笑顔のマークがあしらわれている。

ヒョンデ・キャスパー 1.0T-GDi(韓国仕様)
ヒョンデ・キャスパー 1.0T-GDi(韓国仕様)

同社のデザイナー、サイモン・ロースビー氏の言葉によると、「フィアット500ジープをかけ合わせたようなクルマ」。とのこと。もっとも、フィアットには500 Xという、まさにそんなモデルが存在するのだが。

車内は、外観ほど印象的ではない。腕利きのデザイナーをもってしても、安価なプラスティック素材を上質に展開することは難しいのだろう。インフォテインメント用のモニターは、ダッシュボード上部から不自然に突き出ている。

ヘッドレストを外すと、前後のシートをフラットに倒せ、ベッドのような空間が生まれる。デザイナーのロースビーは、キャンプで車中泊する人も多いと話す。

実際にステアリングホイールを握ると、欧州での提供が見送られた事実が見えてくる。可愛らしいスタイリングをもってしても、洗練不足のメカニズムまでは隠せない。

パワートレインは1.0Lエンジンのみ。試乗車はT-GDiと呼ばれるターボ付きのトップグレードだったが、質感は今ひとつだった。高速道路は、間違いなく得意とはいえない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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