軽量ミドシップを普段使いする アルピーヌA110(1) 長期テスト とてもシンプル

公開 : 2023.03.26 09:45

ベスト・ドライバーズカーの1台、A110。それを普段使いすることとは、どんな体験なのか。英国編集部が長期テストで確かめます。

初回 高評価でも市場の反応は振るわない

早いもので、発売から5年も経過してしまった。アルピーヌA110は、登場と同時に自動車メディアで絶賛といえる高評価を獲得してきた。ところが市場の反応は振るわず、公道で目にする機会は非常に少ない。

軽くレスポンシブなミドシップ・スポーツカーをガレージに招こうと考えた時、多くのドライバーはポルシェを選んでしまう。素晴らしい操縦性を叶えつつ、フロントノーズには特別なエンブレムが付いているから。

アルピーヌA110(英国仕様)
アルピーヌA110(英国仕様)

確かに、ポルシェ・ケイマンは素晴らしい。筆者もファンの1人ではある。しかし、A110と同等の金額で購入できるのは、水平対向4気筒エンジンを搭載したベースモデルに限られる。

ケイマンはよりパワフルだが、車重はA110の方が軽い。パワーウエイトレシオを比較すると、大きな違いはない。より小柄で繊細なのはA110だ。運転する楽しさを、よりピュアに味わえる。

それでは、日常をともにする相棒としてはどうだろう。ポルシェ・ケイマンは、普段使いできる真のミドシップ・スポーツカーだ。これからの長期テストで、A110の資質をあぶり出してみたいと思う。

試乗レポートは何度もお伝えしているから、限界領域での操縦性や、サスペンションの巧妙さに詳しく迫ることはないかもしれない。もちろん多少は触れるだろう。だが、サーキットや峠道だけでなく、毎日の環境でも機能するのか、そこが焦点だ。

普段はどのような体験を与えるのか

郊外へ足を伸ばして、素晴らしいドライブを楽しめることを期待はしている。しかし、それ以上に現実は渋滞へ巻き込まれたり、退屈な高速道路を淡々と走るようなシーンが多いだろう。

素晴らしいドライバーズカーは、普段はどのような体験を与えてくれるのか。もし悪くない日々を過ごせるなら、1台しか所有できない場合でも、運転する喜びへ妥協する必要性は小さくなる。その逆なら、A110の評価にも影響が出るかもしれない。

アルピーヌA110と筆者、アンドリュー・フランケル
アルピーヌA110と筆者、アンドリュー・フランケル

A110が発売された当初、英国にやってきた時には「ピュア」と呼ばれるベースグレードが存在した。2022年に見た目の変化が殆どないマイナーチェンジを受け、現在はA110とシンプルな呼び名に改められている。

選ばれたオプションは比較的少なく、車両価格の4%ほど。もっとも、設定するのが筆者だったら、パーキングセンサー以外のアイテムは選ばなかっただろう。逆に、ボディカラーはアルピーヌ・ブルーではなく、落ち着いたグレーにしたかもしれない。

車重1100kg程度のクルマに、大げさなブレーキは必要ない。走行時のデータを確認できる、テレマティクス・パックも強い必要性は感じない。ステアリングホイールを切った角度まで教えてくれるが、そこまでクルマ・オタクというわけではない。

車内には小物入れが少ないため、シートの側面に収まるスリムなボックスが選べたはずだが、現在はオプションから落とされたようだ。自分でなんとかしよう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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