46歳編集記者 vs 21歳アルピーヌF1ドライバー(前編) まさかの体力勝負!「ただ生きて帰りたいと思った」

公開 : 2026.01.23 17:05

AUTOCAR英国編集部の記者(46歳)と、アルピーヌF1のリザーブドライバーであるポール・アロン(21歳)がまさかの体力勝負に臨みます。F1マシンの運転で体を鍛えることがどれほど重要なのか、確かめました。

F1マシンの運転で体力は重要か?

アルピーヌのF1リザーブドライバー、ポール・アロンが英国にある同チームのジムに到着して間もなく、筆者は自分がまずい状況に置かれていることに気付いた。

彼は最初のエクササイズの説明を聞くや否や、「記録は?」と尋ねてきた。アロンは21歳で、超絶的な体力を持ち、非常に競争心が強い。当然だ。彼はレーシングドライバーなのだから。

記者(46歳)とアルピーヌF1のリザーブドライバー(21歳)、その差は市販車とF1マシン以上?
記者(46歳)とアルピーヌF1のリザーブドライバー(21歳)、その差は市販車とF1マシン以上?    アルピーヌ

レーシングドライバーはあらゆることに競争心を燃やす。たとえ無作為に選ばれた自動車ジャーナリストとの体力勝負であっても。勝てるかどうかよりも、筆者はただ生きて帰りたいと思った。

後から考えれば、最初から勝てるはずがなかった。レーシングドライバーも自動車ジャーナリストも、基本的にはクルマを運転して生計を立てている。世の中には「クルマを運転するのに、それほど体力は必要ない」と主張する人々もいる。だから筆者は、F1において体力が実際にどれほど重要なのかを確かめたかったのだ。

現代のF1チームはトレーナーやスポーツ科学者、栄養士を雇い、ドライバーがフォーミュラカーの驚異的な負荷に耐え、最高のパフォーマンスを発揮できるよう支えている。

一般的な新車発表会にスポーツ科学者が同席することはまずない。だからこそ英国の雑誌記者の間では「発表会太り(launch paunch)」が業界用語として定着しているのだろう。とはいえ、筆者は体を鍛えるのが好きで、マラソンは3時間ちょっとで完走できる。自慢するつもりはないが、平均よりかなり速い方だと思う。

「ランナーみたいですね」とアロンが言う。46歳の記者に怯んでいるのかと一瞬期待したが、続けて「幸い、レースにはそれほど重要じゃないんですけど」と付け加えた。ぐう……。

首にかかる凄まじい負荷

今回、スポーツ科学の博士課程をとっているクレマン・ル・ヴィエネスさんが、アルピーヌのドライバーコーチの考案したトレーニングを指導してくれた。

まずは、首のトレーニングから。マシンを使い、ラグビーのプロップが被るスクラムキャップに似たヘッドハーネスを、アロンと筆者が交代で装着する。

筆者(左、46歳)とアルピーヌF1のポール・アロン(右、21歳)。
筆者(左、46歳)とアルピーヌF1のポール・アロン(右、21歳)。    AUTOCAR

ル・ヴィエネスさんはそれを伸縮性のある短いケーブルに繋ぎ、さらにそのケーブルを重りに繋いだ。わたし達はマシンから横にステップを踏み、首をまっすぐに保ったままランジを行う。これにより筋肉を傷めずに鍛えることができるのだ。

これが結構つらい。6kg強の重りをつけただけで筆者は苦労した。一方、アロンは17kgに挑戦すると言い出し、驚くほど平然とした様子でランジをこなした。

エストニア出身のアロンは比較的首が太いが、F2に昇格するまでは首の筋肉にかかる負荷にそれほど苦労しなかったという。「首はいつも速いマシンに適応していきます」と彼は語った。

とはいえ、F2からF1への飛躍は計り知れない。2019年から2023年までメルセデスF1ジュニアプログラムに所属した後、2024年にアルピーヌF1アカデミーに加入。F1マシンを初めて運転する機会を得たのは、アブダビでのシーズン終了後のテストだった。

2025年、彼はアルピーヌの公式リザーブドライバーとして活動し、アルピーヌおよびザウバーへの “貸し出し” ドライバーとして4回の金曜プラクティスに参加している。「最初のテストでは首が痛くて、途中でコクピット周囲に追加のパッドを入れなければいけませんでした」

「F1マシンを初めて運転する時は、どれだけトレーニングを積んでいても難しいものです。乗るたびに衝撃を受けました」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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