実用的なのに見た目も良い欧州ミニバン 10選 奥が深すぎる合理的なMPVの世界

公開 : 2023.05.28 18:05  更新 : 2024.08.16 16:11

「ミニバン」の印象が弱い欧州ですが、実はSUV全盛期の今でも魅力的なモデルが数多く販売されています。人や荷物を運ぶなら、やっぱりミニバンがベスト。運転が楽しく、とにかく使い勝手の良い10台を紹介します。

欧州ミニバンの奥深い世界 ベスト10

ファッション性と機能性は、必ずしも幸せに両立できるわけではない。無礼を承知で、大抵のミニバンを見ればそれがわかるだろう。欧州では「MPV」や「ピープル・キャリア」などと呼ばれるミニバンだが、近年のSUVの人気やライフスタイル志向の高まりによって、販売は後退しつつある。

しかし、まだ忘れ去られたわけではない。大家族にとっては特に、人と実用性を第一に考えたミニバンに代わる合理的な選択肢はないのだ。スペースの有効活用により、同サイズの他車よりも人やモノを載せる場所が広く取れており、さらに家族の移動にストレスを与えないような、驚きと喜びのある機能が満載されている。

欧州で販売されているミニバンの中から、英国編集部がベスト10を選出。(写真はダチア・ジョガー)
欧州で販売されているミニバンの中から、英国編集部がベスト10を選出。(写真はダチア・ジョガー)    AUTOCAR

ミニバンといえば7人乗りというイメージも強いが、比較的小型の5人乗りモデルもあり、人を乗せる必要はないけれど、広さと気の利いたデザインが欲しいという人にはぴったりである。さらに、商用車をベースにしたモデルも多数存在し、その箱型ボディと無骨なエンジニアリングは、家族が持てる究極の実用車として注目されている。

今回は、英国編集部お気に入りの10台を紹介したい。なお、本稿で記載のスペックや価格は英国仕様に準ずる。日本未導入もモデルも複数含まれるが、あらかじめご了承いただきたい。

1. ダチア・ジョガー

英国における生活費の高騰は、多くの家庭を苦しめている。だからこそ、ダチア・ジョガーの存在は大きい。1万5000ポンド(約255万円)以下で購入できる7人乗りの本格的なファミリーカーであり、まさに現代にふさわしいクルマと言えるだろう。しかし、ジョガーの魅力は価格だけにとどまらない。

ジョガーは、ルーマニアの自動車メーカーでルノー・グループ傘下のダチアが最近投入したばかりの新型車。決してハイテクなマシンではないが、子育て中の家族が本当に必要とするすべての要素が備わっている。5つの大人用シートと、後部にはさらに子供用のシートが2つ用意されているが、大きな荷物を積むときも簡単に折りたたむことができる。競合他社からはもっと高性能で速い、最新技術を満載したモデルも出ているが、ジョガーに乗れば、そのような余分なものは一切必要ないことに気づくだろう。むしろ、無いほうがいいくらいだ。

1. ダチア・ジョガー
1. ダチア・ジョガー

ダチア・サンデロという小型ハッチバックとプラットフォームを共有し(サンデロは最新のルノー・クリオがベース)、最高出力110psの1.0L 3気筒ガソリンエンジンを搭載する。倹約的なエンジンで、中速域で適度なトルクを発揮し、ギア比の高いトップギアによって経済的な長距離ドライブを実現する。7人乗りで荷物を満載にすると、どうしてもパワー不足は否めないが、交通の流れに乗ることはできる。

また、1.6Lガソリンをベースにした最高出力140psのハイブリッド車(基本的にはルノーのEテックと同じ)も選択できるようになり、燃費向上を達成している。パフォーマンスはやや強化されるが、それより多くの人にとって魅力的なのはAT車のみという設定だろう。しかし、実走行では1.0Lガソリン車と比べてやや速く、やや低燃費といった程度なので、どうしても必要でなければ標準車にこだわりたい。

乗り心地とハンドリングは期待通りの性能で、ロングトラベルのサスペンションが路面の凹凸をうまく吸収してくれる。ステアリングは正確で、激しく攻めるとコミカルなまでにボディロールが発生するものの、路面には粘り強くしがみついている。ダチア車は本国ルーマニアで製造されているが、ジョガーに関しては、親ブランドのルノーを思わせるような、ゆったりとした気楽な雰囲気が漂っている。

インテリアは寂しいもので、下位モデルの場合、スクリーンやオーディオなどは省略され、ナビゲーション用にスマートフォンホルダーが内蔵されているだけだ。しかし、上位モデルにはタッチスクリーンと純正ナビゲーションが標準装備される。さらに、自転車やルーフボックスの収納に便利な、ルーフラックとして使えるルーフバーも用意されている。

ここ10年以上、低迷する欧州ミニバンクラスを若返らせるような新型車はなかったが、ジョガーはそれを実現してくれるかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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