クルマらしい形のクルマ フィアット1500L プジョー404  1960年代の凸型ボディ 前編

公開 : 2023.06.11 07:05

1960年代の欧州製ファミリーサルーンの典型といえた、フィアットとプジョー。凸型ボディの2台の魅力を英編集部が振り返ります。

欧州車の歴史に刻まれるべき大切なモデル

よほどのブランド・マニアでなければ、この2台へ強く関心を抱くことはないかもしれない。それでも、プジョー404とフィアット1500Lは、欧州車の歴史に刻まれるべき大切なモデルだと思う。

刺激的な走りを披露したわけではないし、誇らしくコンサルやケンブリッジを名乗るモデルのように、特別な印象を残したわけでもないだろう。だが設計に優れ、車内は広く乗り心地は快適で、近年は激減したファミリーサルーン・ユーザーの共感を得た。

バーガンディのプジョー404と、ネイビーブルーのフィアット1500L ベルリーナ
バーガンディのプジョー404と、ネイビーブルーのフィアット1500L ベルリーナ

ドーバー海峡を越え、英国でも販売された。当たり前のようにフォードやBMC、ヴォグゾール(英国オペル)などを選んできた市民へ、海外モデルに関心を抱かせるきっかけを作った。

404は1618cc、1500Lは1481ccの4気筒エンジンを搭載し、充分な動力性能を発揮しつつ燃費は良好。毎日の通勤を倹約的にこなせ、週末は家族での長距離ドライブを気軽に楽しめた。

英国では排気量に比例する課税制度がなく、自国車に対する支持率は高く、排気量の小さい輸入車を選ぶ人は限られた。とはいえ、一般家庭に普及したテレビの画面には、フィアットやプジョーが頻繁に姿を表した。

ローマのコロッセオ前が紹介されれば、混沌とした車列を縫うように、1500Lが揚々と先を急いでいた。パリのシャンゼリゼ通りが映されれば、古いタクシーの群れと入り交じりながら404が闊歩していた。

さらに404はサファリラリーで活躍。東アフリカでの4度の優勝が、耐久性を証明した。

ロールス・ロイスに迫る外界との隔離性

ある年齢層のクルマ好きにとって、1960年代の普通の欧州製サルーンを想像するなら、404へ近い姿が思い浮かぶに違いない。期待した通りのモノが手に入る、当時の典型的な1台といえた。

横から見ると凸型のスリーボックス・ボディを手掛けたのは、ピニンファリーナ。優雅なウエストラインをまとうが、同じく彼が描いたスタイリングのオースチン・ケンブリッジが存在したロンドンでは、さほど新鮮には感じられなかったかもしれない。

プジョー404(1960〜1975年/欧州仕様)
プジョー404(1960〜1975年/欧州仕様)

その頃の英国では輸入関税がかかり、6気筒エンジンのヴォグゾール・クレスタや、スポーティなトライアンフ2000と同等の1200ポンドという価格だった。気取りすぎない上品さを漂わせる404ながら、割高感があたことは否めないだろう。

ゆとりのある車内空間や、厳しい条件にも耐えうる製造品質へ注目した英国人も少なからずいた。動力性能では際立つ部分がなくても、ミシュランXタイヤは路面をしなやかに捉えた。同時期のロールス・ロイスに迫る、外界との隔離性すら叶えていた。

比較的扱いやすいコラムシフトを得ていた404は、広く愛されたプジョー403の後継モデルとして1960年に登場。当初は1.6Lガソリンで73psの5シーター・サルーンだけの設定だったが、1.9Lディーゼルがすぐに追加されている。

また6シーターのサルーンと、8シーターのステーションワゴンも登場。燃料インジェクション仕様のエンジンも選べた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    トニー・ベイカー

    Tony Baker

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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