英国初 160km/h超の量産車 ヴォグゾール30-98 OEタイプ 誕生100年を5台で記念 前編

公開 : 2023.06.24 07:05

すべての面で高性能化されたEOタイプ

1922年にはOHVの頭文字が追加された、30-98 OEタイプへ進化。1923年1月19日にロンドンのヴォグゾール・ディーラー、ショー&キルバーン社へ届けられている。

4気筒エンジンの排気量は、初期のEタイプが4525cc。OEタイプではストロークが10mm短くなり、4224ccへ僅かに小さくなっていたものの、すべての面で高性能化されていた。

ヴォグゾール30-98 OEタイプ・クリントン・サルーン(1926年式/英国仕様)
ヴォグゾール30-98 OEタイプ・クリントン・サルーン(1926年式/英国仕様)

クランクケースはEタイプと共有するが、ブロックは新設計。シリンダーヘッドが別体となり、オーバーヘッド・レイアウトのバルブはプッシュロッドで動かされた。排気系は運転席側、吸気系は助手席側という配置だった。

最高出力は、Eタイプの98bhp(99ps)から115bhp(116ps)へ増強され、30-98の動力性能は大幅に引き上げられた。それに合わせて、シャシーに用いられたスチール材も肉厚に。ホイールベースは4インチ、101mm伸ばされた。

架装された標準ボディは、通称ヴェロックスと呼ばれたツアラー。シャシーに合わせてEタイプから伸ばされ、幅が広げられ、マッドガードのデザインやダッシュボードのメーター類も変更を受けていた。

60台目のOEタイプが製造された時点で、フロントブレーキを獲得。一番右側へ配置されたペダルを踏めば、フロントでの減速が可能だった。とはいえ通常は、従来どおりレバーで操作するリアブレーキを用いることが一般的だったが。

アマチュア・ドライバーから集めた支持

OEタイプが発表された1922年、英国の議員だったレナード・ロップナー氏は、当時のAUTOCARへ手紙を送っている。最高速度が時速100マイルを超えるクルマがないことに対する不満と、OEタイプに対する期待が綴られていたという。

ロップナーのOEタイプは、1923年3月28日に納車。傾斜したテールとカウリングされたラジエターを備える、2シーターのアルミ製ボディで、両サイドにスペアタイヤが搭載されていた。ボディは眩しく研磨され、シルバーアローという愛称を得ていた。

ヴォグゾール30-98 OEタイプ・ヴェロックス・ツアラー(1925年式/英国仕様)
ヴォグゾール30-98 OEタイプ・ヴェロックス・ツアラー(1925年式/英国仕様)

当時のブルックランズ・サーキットで、彼のOEタイプは最高速記録に挑戦。ステアリングホイールを握ったのはテストドライバーのマット・パーク氏で、見事、時速100.7マイル、162km/hを残している。

その後、ロップナー自身もレースやヒルクライム・イベントへ出場し、複数回優勝。ロンドンとグレートブリテン島北部との往復にも、OEタイプは活躍したという。

1920年代の英国では、アマチュア・ドライバーがモータースポーツへ興じる際のマシンとして、OEタイプは支持を集めた。実際、多くの主要イベントで勝利を重ねている。

ヴォグゾールは、OEタイプの評判からブランド力を高めていった。遥か南のオーストラリアでも、ディーラーを営むボイド・エドキンス氏が最高速に挑み、30-98の能力を知らしめている。

それでも1925年頃には、OEタイプの技術や性能は際立たなくなっていた。サンビームやアルファ・ロメオなどが、先進的な技術を採用した軽量なスポーツカーを投入。設計の古さは隠せなかった。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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