【レクサスLSコンセプト】そもそもなぜ6輪に?担当デザイナーに聞く、ゼロから向き合ったショーファーのニーズ #JMS2025

公開 : 2025.11.03 11:45

レクサスはジャパンモビリティショー2025に『LSコンセプト』を出展。ショーファーカーのニーズを満たすため、6輪車もありだという提案です。そこで、そもそもなぜかなどについて内田俊一がデザイナーに話を聞きました。

ショーファーカーだからこそ

レクサスジャパンモビリティショー2025に『LSコンセプト』を出展。ショーファーカーのニーズを満たすため、6輪車もありだという提案だ。そこで、そもそもなぜかなどについてデザイナーに話を聞いた。

元々ショーファーカーはセダンが主流だったが、近年大型ミニバンも台頭。その理由はセダンにない広さと使い勝手の良さだった。しかし、元々ショーファーカーを想定していないことから、本来必要とされていたニーズが満たされていないという声があった。

レクサスLSコンセプト
レクサスLSコンセプト    内田俊一

その点について担当デザイナーはこう語っている。

「様々な装備を充実させてどんどんリッチに豪華にしていった結果、VIPが座るシートはすごく立派でマッサージ機能がついていて、アームレストもがっしりとした立派なものが装備されました。しかしシートそのものが大型でホールド性も高いことから、スマートに乗り降りしにくいという意見があります」

また、VIPの場合、秘書などと多人数で乗車するニーズも多い。そういった場合、「先に秘書を乗せてからVIPが乗ったり、雨が降っているのにまごまごしてしまったりするシーンが見受けられ、スマートではありません」という実態がある。

そこで、「ゼロから本当のニーズに向き合って作ったら、本当の嬉しさを提供できる空間ができるのではないかという試みでこのクルマを提案しました」と述べる。

例えば、LSコンセプトは開口部の大きいスライドドアが装備されている。

「ドア全体の7割ぐらいが開口部になるので、2列目と3列目に同時にスマートに乗車できます。これがパッケージの重要なポイントです」

まずはリアタイヤを小さくした

ではなぜ6輪にしなければいけなかったのか。それも前述の開口部に大きく関係する。

「4輪だとタイヤが四隅に置かれるため、開口部の広いスライドドアを採用しても大きなホイールハウスが邪魔をしてしまいます。また、シートにふたりぐらいはゆったりと座れるかもしれませんが、3人以上で座ることができるくらいの広さを求めると、スペースが限られ難しくなります。

レクサスLSコンセプト
レクサスLSコンセプト    内田俊一

そこで、リアタイヤをキューッと小さくすると間口が広くなり、中のホイールハウスも小さくなるというロジックで、まずはリアタイヤを小さくしました」

しかし、「小さいタイヤが一輪だけだとバランスも悪く、車重に耐えられるのか、駆動力は大丈夫かということから、もう一輪足すことでしっかり支えて走らせるようにと考えた結果の6輪なのです」とのこと。

そして、「使う人を中心に考えた際に、そのまわりの機械たちはそれに合わせて自ら変革を遂げなくてはなりません。そういう姿勢で開発すべきです」とコメントした。

またショーファーカーであることからプライバシーも重要だ。ちょうどサイドウインドウあたりにスリットのような細い形状が見て取れる。

「外から中を見ると霞がかって見えますが、中側は竹材でブラインドのような意匠で、そこから外が透けて見えるようになっているので、非常にリラックスできる空間になっています」とこだわりを明かした。

ショーカーだから目立つように6輪にしたわけではなく、そこには明確な理由があり、目的のために問題をどう解決するかという、素直な論法が導き出した答えなのであった。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    内田俊一

    日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も得意であらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。現在、車検切れのルノー25バカラとルノー10を所有。
  • 撮影

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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