マクラーレンP1 vs ポルシェ918スパイダー

公開 : 2014.10.15 23:55  更新 : 2017.05.29 19:32

またもっと強くペダルを踏めば、一言では到底言い表せない、たくさんのことが同時に起こる。

まず第一にコスワースのDFVエンジンのようにエッジの立ったV8の轟音が響き渡る。第二に後ろからとてつもない力でげんこつを喰らったかのような加速のおかげで、頭がシートにめり込む。第三に、いままでに使ったこともないような首の筋肉が刺激され、軽い麻痺状態、あるいは自然に涙がこぼれ落ちそうになる。第四、しまいには顎がはずれるかもしれない。

そして第五、この時点ではフルブースト状態のe-パワーが前輪に鞭を入れ、これが本当の四輪駆動というものか……と悲嘆に近い感情をもつはずだ。心臓が止まるほどのトラクションとはこのことを言う。

レース・モードで高いギアに設定し、低い回転の状態からアクセルを踏み込んでも炸裂的な加速を見せる。そこからさらにホット・ラップ・モードにすれば、ノイズとレスポンスは本気のソレ。もうこの時点では興奮で理性を保つのが難しいほどである。

低い回転域では、感覚としては12.0ℓ V10ターボディーゼル・エンジンかなにかを動力源としているように感じる。500rpmくらいから130.5kg-mのトルクが発生していると言われても信じてしまうほどである。9000rpm以上では1970年代のF1マシンを思い起こさせる迫力。そうでありながらも高速道路を110km/h前後でハイブリッド・モード固定で巡航させれば、14.2km/ℓを超えることができるし、CO2排出量は70g/kmに抑えることもできる。アビリティの幅広さは恐れ多いレベルだ。

これに関してはP1も同様。しかし918の奥深さにはやや欠ける。とくにモーターのみで走らせた場合はすこし薄味である。

ただしやはりこちらもアクセルを踏み込めば、容赦無い加速に恐れ慄き、反射的に踏力を弱めてしまうかもしれない。暴力的というのがまさにピッタリの表現で、強大なトルクはあなたをたちまち泣きっ面にするはずだ。

ブレーキ・フィールと制動力はP1のほうがうわて。第一の理由としてP1のほうが918よりも200kg軽いことが挙げられる。また第二にマクラーレンはブレーキからエネルギーを回生させることはない。この点がポルシェと異なり、マクラーレンはペダル・フィールの方をエネルギー効率よりも重視したというわけだ。ハードなブレーキングでは918のフィールも許容範囲内なのだけれど、軽いブレーキングでは感覚がいまいち。ハイブリッド・モードではコースティング機能まで動作する。

操舵、シフト・チェンジ、ステアリングの味付けはそれぞれまったく異なる。もっともアグレッシブなモードでは、ポルシェの方がキビキビと迅速に変速していき、スポーツ・モードでも滑らかにそして上品に変速する。

ステアリングに関してはP1の方がナチュラル。路面の状況も緻密に掴みやすい。一方の918のステアリングも正確で迅速。そのうえダイレクトなのだけれど、P1に乗れば、918の方にはある種の冷淡さを感じた。

コーナーでは特にターンインの際に両者はもっとも魅力的と形容できる振る舞いを見せる。

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