相当なインパクト フィスカー・オーシャンへ試乗 航続距離708km ソーラーパネル搭載 後編

公開 : 2023.08.14 08:26

カリフォルニアに拠点を置くフィスカーが、いよいよ本格始動。iX3やEQCのライバルに当たる電動SUVを、英国編集部が評価しました。

バッテリーは106kWh 航続距離は708km

サステナビリティやソーラーパネル内蔵ルーフなども興味深いが、フィスカー・オーシャンの本当の狙いは、電動のファミリーSUVに新たな価値を提供すること。実際の価格と航続距離を知ると、なるほど、とうなずけるだろう。

今回の試乗車、ミドルグレードとなるツインモーターのオーシャン・ウルトラの英国価格は、5万ポンド(約900万円)を切る。それでいて、駆動用バッテリーの容量は106kWhと大きく、航続距離はWLTP値で708kmがうたわれている。

フィスカー・オーシャン・ワン(欧州仕様)
フィスカー・オーシャン・ワン(欧州仕様)

ちなみに、77kWhの駆動用バッテリーを積むヒョンデアイオニック5が約5万1000ポンド(約918万円)で、74kWhのBMW iX3が約6万2000ポンド(約1116万円)に設定されている。85kWhのテスラモデルYでも、約5万3000ポンド(約954万円)だ。

試乗では、都市部や高速道路などを複合的に走行して、600kmから640kmは現実的に走れることを確かめている。市街地など、速度域の低い時間が長くなるほど、距離は更に伸びるはず。

一般的な乗られ方の場合、オーシャンなら英国でも週に1度充電すれば充分といえる。日曜日にガソリンスタンドで給油するように、従来的な感覚で充電ステーションへ立ち寄れば、普段使いできるだろう。急速充電能力は、DCで最大200kWと早い。

ボルボのユーザーへ共感を生む運転体験

駆動用バッテリーが大きい分、オーシャンは軽くない。それでも、シャシーはそれを巧みに受け止めている。

車重は2435kgあり、同クラスのモデルと比較して400kgほど重いものの、最高出力は564psとパワフルで加速は鋭い。ステアリングには慣性の大きさが伝わってくるが、コーナーでは穏やかにボディロールが生じる程度だ。

フィスカー・オーシャン・ワン(欧州仕様)
フィスカー・オーシャン・ワン(欧州仕様)

走行時は快適で、テスラ・モデルYなどより乗り心地はしなやか。路面の影響を受けにくく、車内は落ち着いている。SUVとして、スポーティな方向へ振られていないことがプラスに働いている。

ステアリングホイールは適度な重み付けで、レシオはスローすぎずクイックすぎず。グリップ力は高く安定している。コーナーへハイスピードで侵入すると、斬新的なアンダーステアで限界を教え、スタビリティ・コントロールが介入する。

例えるなら、BMWやアウディより、ランドローバーやボルボ、メルセデス・ベンツのユーザーへ共感を生むドライビング体験だと思う。動的特性はしっかり磨かれており、開発段階で表れた課題を克服したであろう洗練度にある。

エントリー・グレードのオーシャンは、更に魅力的。シングルモーターの前輪駆動になり、273psと最高出力も劣るものの、70kWhの駆動用バッテリーを積み1度の充電で442km走れる。しかも、英国価格は3万5970ポンド(約647万円)からだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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