マクラーレン750S 「簡単」ではなかった6年目の進化 年内の枠、完売の反響

公開 : 2023.09.03 10:25

マクラーレンの新型車「750S」の開発者にインタビュー。速いだけのクルマなら簡単と話すシェーン・ハーマン氏が、見所と受注状況を明かしてくれました。

速いだけのクルマは「簡単」

マクラーレンのニューモデル「750S」は、そのネーミングからも想像できるとおり、これまで約6年間にわたって生産が継続されてきた720Sの後継車となるもの。

今回はそのジャパン・プレミアのために来日した、マクラーレンのプロダクト・プランニング・マネージャー、シェーン・ハーマン氏にインタビューする機会を得たので、その内容とともに750Sの魅力をお伝えしたいと思う。

マクラーレン750S
マクラーレン750S    マクラーレン・オートモーティブ

ーー750Sの開発プロジェクトはいつから始まったものなのでしょうか?

「720Sが完成した6年前から、次のプロジェクトとしてその進化の方向性は考えていました。実際に本格的なプロジェクトが始まったのは2年ほど前から。速いクルマを作るのは簡単なことですが、ロードカーとして日常的に使えるクルマを作ることが非常に難しい。“速さと実用性を両立”させることが750Sでは重要な開発の課題でした」

ーー750Sというネーミングからも分かるとおり、ミドに搭載されるエンジンはさらに30psのパワーアップを実現し、車重も30kg低減されました。そして今伺ったような日常的に使えるようなスーパーカーというコンセプト、つまり720Sからの進化を、カスタマーは実際に750Sに乗って感じることができるでしょうか?

「私自身、すでに何時間もこの750Sをドライブしました。答えは自信をもってイエスといえます。その違いはエンジンをスタートさせた瞬間から分かるでしょう」

顧客の望みはエボリューション

ーー6年間にわたって生産を続けた720Sのカスタマーは、このビッグマイナーチェンジを歓迎するでしょうか。

「それは私たちも懸念していた問題でした」

750Sのプロダクト プラニング・マネージャーを務めたマクラーレン・オートモーティブのシェーン・ハーマン氏(右)と、日本代表の正本嘉宏氏。
750Sのプロダクト プラニング・マネージャーを務めたマクラーレン・オートモーティブのシェーン・ハーマン氏(右)と、日本代表の正本嘉宏氏。    マクラーレン・オートモーティブ

「ですが実際に750Sをローンチしてみて、それは720Sのカスタマーにも、とても受け入れられていることが分かりました。カスタマーは我々のようなブランドに、常にエボリューション、改善していくことを望んでいたのです。違う表現を用いるのならば、外よりも内の変化を望んでいるので、今回のマイナーチェンジは不満とはなりませんでした」

ーー新CEOのマイケル・ライターズ氏は、マクラーレンのプロダクトについて、まずクオリティのさらなる向上が必要とコメントしていましたが、すでに750Sではその結果は表れているのでしょうか?

「新たなクオリティ・コントロールに関しては、2つの点でコメントができると思います。1つは新しくさらに厳しいプロダクトのチェックシステムが生産ラインに導入されたこと。もう1つはエンジニアリング面での改善です。たとえばフロントバンパーをワンピースの構造とすることなど、クオリティに悪影響を与える可能性がある部分は徹底的にその設計を見直しました」

ーー750Sは、マクラーレンが現在シリーズ生産するモデルの中では最もパワフルで軽量なモデルです。(ここから30%のコンポーネントを刷新し、クーペでは0-100km/h加速で2.8秒という驚異的な運動性能を実現しているだけに、やはり市場での注目度は高いはず) 現段階での販売状況はどの程度のものなのでしょう?

「2023年分の枠は、すべて完売している状況です。ちなみに我々は、750Sの生産期間は720Sの半分、約3年間と計画しており、したがって全生産台数も720Sの半数という結果になるでしょう。750Sに続く次世代のモデルは、常に見据えているとコメントしておきます」

記事に関わった人々

  • 執筆

    山崎元裕

    Motohiro Yamazaki

    1963年生まれ。青山学院大学卒。自動車雑誌編集部を経て、モータージャーナリストとして独立。「スーパーカー大王」の異名を持つ。フツーのモータージャーナリストとして試乗記事を多く自動車雑誌、自動車ウェブ媒体に寄稿する。特にスーパーカーに関する記事は得意。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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