軽いフロントに後輪駆動 メルセデスAMG SL 43へ試乗 期待以上の2.0L直4ターボ

公開 : 2023.08.30 08:25

AMGのSLでありながら、2.0L 4気筒ターボを搭載する43。軽いフロントと後輪駆動が生む魅力を、英国編集部は評価します。

期待以上に優れる2.0L直4のSL

メルセデスAMGを冠するSLでありながら、ボンネットを開くと2.0L直列4気筒ガソリンターボエンジンが姿を表す。かくして、筆者の期待以上に優れたモデルだった。

メルセデス・ベンツは、この手のオープン・グランドツアラー作りに長けている。同社の短くない歴史を遡れば、1954年のW121型190 SLへ辿り着く。

メルセデスAMG SL 43 ツーリング(英国仕様)
メルセデスAMG SL 43 ツーリング(英国仕様)

ガルウイングドアが注目を集めたレーシングカー、W198型の300 SLは、専用開発のスペースフレーム・シャシーに最先端の燃料噴射6気筒エンジンを搭載し、非常に高価だった。そこで、ロードスター仕様の喜びを広めるため生み出されたのが、190 SLだ。

ベースとなったのは、W120型の180、通称ポントンと呼ばれる4ドアサルーン。スタイリングの特長はそのままに、ひと回り小さくリデザインされ、ボンネットには1.9Lの4気筒エンジンが載っていた。

最高出力は、当時としても目立った数字とはいえない106ps。それでも、現実的な価格で大ヒットといえる人気を博した。

W121型とW198型との差を鑑みれば、2023年にリリースされた4気筒版と多気筒版の見た目の違いは殆どない。マフラーカッターが台形ではなく円形になることと、若干穏やかなデザインのバンパーが与えられる程度だ。

それ以外は、4.0L V8エンジン版と同じといっていいだろう。ボンネットは長く、全体のフォルムはエレガント。大きなアルミホイールが、凛々しいスタンスを作っている。筆者の目には、カッコよく映る。

フロントが軽く好ましいドライビング体験

パワーにも不足はない。メルセデスAMG A 45の進化版となる、M139型4気筒ターボユニットを搭載し、最高出力は380psを発揮する。電圧48Vのマイルドハイブリッドを採用し、回転域を問わず力強さを感じられる。

SL 43のシステムで特徴となるのが、13psのスターター・ジェネレーターの他に、ターボチャージャー内に電気モーターが組み込まれていること。排気ガスの流量が少ない状態でもタービンを回転させ、空気を送り込み、鋭いアクセルレスポンスを叶えている。

メルセデスAMG SL 43 ツーリング(英国仕様)
メルセデスAMG SL 43 ツーリング(英国仕様)

加えて、V8エンジン版のSLでは四輪駆動が標準なのに対し、4気筒版は後輪駆動になることも特筆すべき点。フロントのドライブシャフトが備わらず、4気筒少ないエンジンと相まって、フロントエンドが軽く仕上がっている。

アルミホイールは1インチ小さく、タイヤのサイドウォールが増えている。好バランスな、ドライバーズカーになる要素は備わっている。実際、SL 55とSL 43を直接乗り比べてみると、後者の方が好ましいドライビング体験を味わえることが見えてくる。

駐車場から発進してすぐ、ステアリングレシオが若干スローになっていることへ気付くが、それでもロックトゥロックは約2回転しかない。むしろ反応は自然で、速度域が高まるとフロントタイヤとのコミュニケーションも取りやすい。

後輪操舵システムが備わらなくても、ボディ全体が軽く感じられる。コーナリングはシャープさを増し、1735kgという車重を感じさせない。フロントアクスルの安定性も高まっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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