英国のガソリンスタンド事情 EV普及で「給油」需要減 厳しい生存競争へ

公開 : 2023.12.09 18:05

・クルマの電動化が進むと給油所はどうなるのか。
・ガソリンだけでは商売にならない? 変容するサービス。
・EV化を推し進める英国の現状とは? 現地レポート。

ガソリンスタンドは消えてしまうのか

クルマの電動化が進む中で、ガソリンスタンドはどう立ち回っているのだろうか。EV普及を進める英国では、「給油」を取り巻く環境が急速に変化している。現地記者のレポートをお届けする。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※

EVが普及し、燃料需要が減るとガソリンスタンドはどうなってしまうのだろうか。
EVが普及し、燃料需要が減るとガソリンスタンドはどうなってしまうのだろうか。

ちょうど100年前、英国初のガソリンスタンドがバークシャー州にオープンし、当時多くのドライバーを喜ばせた。

バークシャー州オルダーマストンにあったこのスタンドは、AA(英国自動車協会)が所有していた。燃料をクルマに補給できる便利さが自動車ユーザーに好評で、最初のスタンドがオープンしてからわずか4年後の1923年には、全国に7000台のポンプが稼働していた。

今日に至っては、オルダーマストンの給油所も、ただの待避所と化している。市場がEVに移行している今、多くの給油所がこうして姿を消していくことになるのだろうか?

燃料販売、いつまで持ちこたえる?

オルダーマストンから30kmほど離れたバッキンガムシャー州マーローにあるプラッツ・ガレージという店舗では、係員が給油するという昔ながらの方法を続けている。

新車ショールーム(同店舗はフォードのディーラーでもある)の脇にある小さな給油スペースにクルマを停めると、ドアから係員が飛び出してきて、どの燃料をどれだけ欲しいか尋ねる。給油後は車内に座ったまま支払いを済ませ、エンジンをかけて走り去る。それがいつもの光景だった。少なくとも、マーローの市民がEVを買い始めるまでは。

英国のガソリンスタンドは進化を求められている。
英国のガソリンスタンドは進化を求められている。

「EVのせいで、ポンプの売り上げが落ちていることに気づきました」と、プラッツの社長で、創業者の孫でもあるティム・プラット氏は言う。「特に軽油の需要は、レンジローバーのようなSUV用に購入していた人がアウディQ8 eトロンなどに買い換えたため、一夜にして落ち込みました」

にもかかわらず、プラット氏は燃料の販売を続けると言う。それだけが彼の仕事ではないし(ショールームだけでなく整備工場もある)、独立系ガソリンスタンドのような大きな間接費もない。

プラット氏はフォードのセールスマンとして、EVを所有する顧客とも話をする。「彼らの多くはわたしにこう言うんです。『通勤や短距離移動には最適だが、長距離ドライブでは充電が不確実で時間がかかりすぎる。ガソリン車に戻るよ』ってね」

プラット氏は、多数のEVドライバーが同じように感じていると仮定し、少なくとも今後15年程度は燃料販売を維持できると確信している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事