これまで同様「しっかり5シリーズ」 BMW i5 eドライブ40へ試乗 速く機敏で運転が楽しい

公開 : 2023.12.26 19:05

ビッグサルーンのフィーリング

プラットフォームは、フラットなフロアに駆動用バッテリーを敷き詰めたスケートボード構造ではなく、従来的なCLARアーキテクチャの改良版。とはいえ、84kWhのバッテリーはフロア部分に並べられている。

アクスルマウントやブッシュ、サブフレームの補強メンバーなどは専用品。リアに搭載される駆動用モーターの重量を受け止めるべく、エンジン版の5シリーズ・ツーリングと同等の、セルフレベリング機能付きエアスプリングも組まれる。

BMW i5 eドライブ40 Mスポーツ(英国仕様)
BMW i5 eドライブ40 Mスポーツ(英国仕様)

i5のツーリングも、2024年には登場予定。ステーションワゴンのバッテリーEVはまだ珍しく、人気を集めるのではないだろうか。

実際に英国の市街地を走らせてみると、フィーリングはビッグサルーン。車重が2130kgあり、全長は5060mm、全幅が1900mmもあることを考えれば、まったく不思議ではない。先代の5シリーズよりひと回り大きく、路上でも成長したことを実感する。

だが、オプションのアダプティブサスペンション・プロフェッショナル・パッケージが試乗車には実装され、想像より扱いやすく感じた。これにより、後輪操舵システムとアダプティブダンパーが追加される。

車内空間は、デジタル技術が中心の新しい高級感。マルチカラーのアンビエントライトがダッシュボードを彩り、14.9インチのタッチモニターが中央に据えられ、iドライブ・インフォテインメント・システムが稼働する。

ロータリーコントローラーとショートカットキーで、操作性を高めているものの、インターフェイスは少々複雑。覚えるまでに時間を要する。

従来以上に7シリーズの雰囲気へ近づいた

人間工学的な配置は良好。ボディが大きいだけに、空間には余裕がある。ドライビングポジションはやや高め。フロントシートの下、リアシートの乗員がつま先を潜らせる空間も、若干狭い。駆動用バッテリーの影響だろう。

内装は、i7ほどではないものの、素材は上質で組み立て品質も高い。若干、質感に及ばない部品も散見されるが。

BMW i5 eドライブ40 Mスポーツ(英国仕様)
BMW i5 eドライブ40 Mスポーツ(英国仕様)

乗り心地は全般的にしなやか。標準のMスポーツ・サスペンションの若干落ち着かないマナーは、アダプティブダンパーが改善させている。

操縦性は、まとまりに優れスマート。後輪駆動らしいシャシーバランスで、鋭く正確に大きなボディを導いていける。シングルモーターでも、動力性能は充分以上。アクセルレスポンスもリニアで鮮明。ツインモーターの必要性を感じさせない。

ブレーキペダルの印象は、漸進的で好ましい。ただし、パドルなどで回生ブレーキの強さを変更できるシステムを、BMWは採用していない。そろそろ導入しても良いのでは。

試乗の限り、航続距離は400kmから450kmの間になる様子。大きなアドバンテージはないが、自宅や出勤先で充電できるなら困ることはないだろう。

新しいi5は、従来以上に7シリーズの雰囲気へ近づいた5シリーズだといえる。価格も、そのぶん上昇したと考えていい。有能で洗練された、完成度の高い電動サルーンだ。予算に余裕がある5シリーズ検討者には、バッテリーEVへ踏み出す好機になるはず。

BMW i5 eドライブ40 Mスポーツ(英国仕様)のスペック

英国価格:7万4105ポンド(約1453万円)
全長:5060mm
全幅:1900mm
全高:1515mm
最高速度:193km/h
0-100km/h加速:6.0秒
航続距離:476-582km
電費:5.0-6.2km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:2130kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:81.2kWh
最高出力:340ps
最大トルク:43.7kg-m
ギアボックス:1速リダクション(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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