少々の時代遅れ感は否めない BMW M340i ツーリング 求めるすべてを叶えるワゴン(1)

公開 : 2023.10.28 17:45

英国編集部での評価が高い3シリーズのステーションワゴン 自分が求める内容と驚くほど一致するクルマ 数か月をともに過ごした印象とは?

自分をイメージして開発したと思えるモデル

一般的に、自動車ジャーナリストはメーカーから試乗して欲しいクルマが指定される。その1台のことを真剣に考え、感じ取り、文章や映像へ印象をまとめる。改めて説明されるまでもないことだとは思うが。

しかし、過日に開かれたBMW X1の発表イベントでは、違うクルマのことが頭から離れなくなった。もちろん、新しいコンパクトSUVにも真剣に向き合った。だが、その会場で運転した別のBMWの方が、より強い印象を残してくれた。

BMW M340i xドライブ・ツーリング(英国仕様)
BMW M340i xドライブ・ツーリング(英国仕様)

X1の試乗をそつなく終えて駐車場へ戻ると、他のメディアが乗ったそれ以外のX1に紛れて、フェイスリフト後の3シリーズ・ツーリングが停まっていた。筆者は思わず会場の担当者へ声をかけ、周辺の道を試乗していいか尋ねてしまった。

自動車メーカーのデザイナーやエンジニアが、自分のような人物をイメージして開発したのではないか、と思えるモデルが稀にある。つまり、自らが求める内容と驚くほど一致しているクルマと出会う時がある。最近は、そんな機会は相当にレアだけれど。

それが、今回取り上げるガンメタリックのM340i xドライブ・ツーリングだ。心優しいBMWのスタッフは、X1のイベントがひと段落ついた時期に、筆者へしばらく貸し出してくださった。

少し時代遅れのクルマなことは否めない

正直なところ、少し時代遅れなクルマだということは否めないだろう。ステーションワゴンというボディスタイルが、現在は絶滅の危機にある。クロスオーバーやSUVに取って代わられ、ボルボですら、英国ではV60V90の販売を終了すると告知している。

パワートレインも、排気量が3.0Lもある直列6気筒ガソリン・ターボエンジン。ダウンサイジングされた2.0L 4気筒ターボでもないし、駆動用モーターも載っていない。ターボの過給圧は低く、爽やかな秋風のように軽くトルクを高める程度だ。

BMW M340i xドライブ・ツーリング(英国仕様)
BMW M340i xドライブ・ツーリング(英国仕様)

それでもマイルド・ハイブリッドで、電圧48Vのスターター・ジェネレーター(ISG)が組み合わされている。アイドリングストップを滑らかにこなし、追い越し加速時などは優しく内燃エンジンをアシストしてくれる。

その仕草は至って自然。メカニズムに強い関心を抱かなければ、直列6気筒エンジン以外にパワーを生み出している存在があると、気付かないで過ごすM340iのオーナーもいらっしゃるだろう。

BMWマニアからは、折角ならM3 ツーリングを選べば良かったのに、と聞かれるかもしれない。筆者にはそんな友人はいないけれど。

最近、M3 ツーリングへ試乗する機会もあり、想像以上に素晴らしい印象を与えてくれた。同時に、毎日乗るクルマとして考えた時、M340i xドライブ・ツーリング以上の魅力までは感じられなかったことも事実だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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