【実際に購入レポート】ポルシェ・タイカンの長期テスト(18) 遂に走行距離が3万km越え 知らなかったバッテリーの不都合

公開 : 2023.12.26 17:45

エネチェンジの皆さんには大変失礼をした

この日は決局、妙高SAの50kwhの急速充電器で30分/22.6kwh。更に姨捨SAの40kwhで30分/18.2kwhの充電を行い、何とか甲府に帰着したが、このようなまるで「尺取り虫」のような充電を繰り返すことは、EVの航続距離の最大の弱点として、何としても避けたいと思っていただけに、実に腹立たしかったのである。

後日、エネチェンジ側で、系列の他ホテルを使い、同じタイカンを借り出してテストをしてくれた。その結果は、やはりこの程度の量しか充電できず、クルマに問題があるのでは、との報告が来た。

遂に走行距離が3万km越え 知らなかったバッテリーの不都合
遂に走行距離が3万km越え 知らなかったバッテリーの不都合    笹本健次

私は、これまでのタイカンの性能の高さからも、この調査結果に疑念を抱いたが、念のため、ポルシェのサービス・センターに問い合わせると、何と「バッテリー残量をギリギリまで減らしてしまうと、6kwh程度の普通充電器では、なかなか入って行かず、この程度になってしまいます。急速充電なら入るのですが」という唖然とするような答えが返ってきた。

こんなことなら、なぜ、あらかじめポルシェ側はユーザーにこのような現象を伝えないのか、体験した人にしか判らない、では話にならず、一気に不信感が募ったのである。私の場合、これまで、できるだけバッテリー残量を減らさないようにしてきたので、体験しなかっただけだったのだ。

このようなことが発生するからこそ、EVの浸透は進まないんだなー、としみじみ感じると同時に、エネチェンジの皆さんには大変失礼をした、とこの場を借りてお詫びをしたい。

直近タイカンで遠出の第二回目

第二回目は、1泊2日の旅で西伊豆の土肥温泉を訪れた。川崎の自宅から土肥までは約150kmであり、現在は、東伊豆道路ができているので、2時間半ほどのドライブの距離である。

残念ながら、宿泊先のホテルにはEV充電器が無く、来年2月にポルシェの充電器が装着される予定だという。往復300km程度なら充電なしでも走行可能だが、スカスカで帰宅してからの充電時間の問題を考慮して、帰りの東名高速足柄SAで30分の充電を行った。

遂に走行距離が3万km越え 知らなかったバッテリーの不都合
遂に走行距離が3万km越え 知らなかったバッテリーの不都合    笹本健次

もし、内燃機関のクルマでこの2回の旅行をしたなら、特にディーゼルを使用したなら、この程度の走行距離で、燃料のことなど頭に浮かびもしなかっただろう。そう考えると、EVを使用するという事は、現時点で実に煩わしい、という結論にならざるを得ない。

しかも急速充電器を使用する際の料金は、契約内容で異なるが総じて高く、軽油の料金と大差はないことにも成りかねない。

日本国内では、欧米や中国に比べ、EVの進捗率が低いと新聞やテレビでは騒いでいるが、もっと切迫した状況になるか、画期的な技術(例えば個体電池)が生まれるかしないと、賢明な日本国民はそう簡単にはEVを買ってくれそうもないと思う。

12月23日現在でタイカンは3万308kmを走破している。川崎と甲府の往復を繰り返すだけなら、双方に8kwhの充電器を装備しているので、いわば最高のインフラが整っており、何も問題はないが、ひとたび、他の地方に出かければ、インフラの脆弱性に唖然とするしかないのである。だからこそ、経済産業省の充電インフラ検討会議でも、せめて、宿泊施設の充電器の充実を訴えてきたが、まだまだ、これからの話である。

因みに、先回のレポートからの進捗を報告すると、11月3日から12月23日までの50日間で2928kmを走り、その間に830.98kwhの充電を行った。従って今回の電費は3.52km/kwhと悪化した。この原因は主に、気温が下がって、ヒーターを強く使い始めた事が一番効いているだろう。12月下旬となり更に気温が冷え込んだ現在の、満充電時の走行可能距離は350km台まで下がっている。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    笹本健次

    Kenji Sasamoto

    1949年生まれ。趣味の出版社ネコ・パブリッシングのファウンダー。2011年9月よりAUTOCAR JAPANの編集長を務める。出版業界での長期にわたる豊富な経験を持ち、得意とする分野も自動車のみならず鉄道、モーターサイクルなど多岐にわたる。フェラーリ、ポルシェのファナティックとしても有名。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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